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誤嚥について

こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。

今日は誤嚥について説明します。

1.誤嚥とは?

食べ物や液体などが食道に入らず誤って気管に入ってしまうことを「誤嚥」といいます。

一般的には少量でも食物が気管の方に入れればむせて気管から吐き出す反射が起こります。しかし、喉の感覚が低下しており、気管にものが入り込んだにもかかわらずむせない場合もあります。その場合は喉にものが溜まってしまい、かすれた声(嗄声)になったり痰が急に喉に絡むようになったりします。

むせたり咳き込んだりする事は異物を吐き出そうとする防御危険が働いている証拠でもありますので悪いことではありません。むせてしまった時は慌てずに、介護をされている方は手のひらをカップ状にして首の後ろの付け根あたり(後頸部)や、背中を軽く叩いて介助をしてあげてください。

気管に入ったものが気管を塞ぎ、呼吸ができなくなってしまうと窒息のおそれがあります。窒息を起こした場合は、最初は枯れそうな声とともに顔が真っ赤になった後、すぐに唇が青くなり、動きが止まるような状況になります。

厚生労働省の人口動態統計によれば窒息による死亡者は2005年には9000人から10,000人と報告されており交通事故に匹敵する数になっています。

2.誤嚥と肺炎

誤嚥をしたら必ず肺炎になるわけではございません。

これは誤嚥物と身体の抵抗力との力関係が関わっておりますので、同じものを誤嚥したとしても肺炎になる人もいればならない人もいます。

同じ人であってもその日の体調などによって結果が異なることや、肺炎になっても原因菌と考えられる菌が多数存在し、本当に誤嚥から来ているのかどうかの判断がしにくいことが考えられます。

<現在考えられている誤嚥性肺炎には3つのタイプがあります。>

①食事中の誤嚥物に細菌が含まれることによりそのまま肺炎となるもの

②喉に宿っていた細菌の塊からの分泌物が、食事以外の時、例えば睡眠中に気管へ入り込むことにより肺炎となるもの

③食後に少量の異物内容が逆流しそれを誤嚥したために肺炎となるもの

があります。

研究によると、健康な老人は肺炎を起こす原因である細菌の塊が全体の8%に検出されたのに対し、長時間寝ているような要介護老人では38%に認められたとの報告があります。

また毎食後ブラッシングをした状態で2時間起こしたままにした患者群と、寝たきりのままで過ごした患者群とで100日間の1人平均発熱日数が前者の方は2日減少し後者は逆に6日増加したとの報告もあります。

<誤嚥性肺炎を予防するためには>

①食後あるいは昼食前の口腔清掃を徹底すること

②食後すぐに横にさせず食後2時間位座った状態に近い状態でいること

以上の2点が大事であると考えられます。

ご家庭内での口腔ケアは限界がありますので1ヵ月から3ヶ月位の間隔で最寄りの歯医者にブラッシングなどをしてもらうことをお勧めします。また、訪問診療をされているとこのにお願いするのも方法の一つです。

さらに、食べ物の形態を工夫することでむせることが減ったり誤嚥が予防できたりすることがあります。最も嚥下しやすい形状は噛み砕いたり舌にのせ潰す必要がなく姿勢の工夫だけで咽頭方向に食べ物を送ることができる性状のものです。具体的にはヨーグルトや濾して具や粒が入らないようにした性状です。

この時に注意していただきたいのは、水分が多くなりがちであると言うことです。水分が多いとサラサラになり、お口の中にためておくことが難しく咽頭へ流れ込んでしまい、誤嚥やむせを誘発してしまいます。


次に嚥下しやすい性状は、舌で押しつぶすことができて、さらに舌でまとめやすい性状であると言うことです。豆腐やプリンのようなものですが、肉や魚でもミキサーにかけて味付けをしゼラチンで固めれば食感も良く飲み込みやすくもなります。


寒天やこんにゃくのように表面がなめらかでもしっかりと噛んで舌でまとめなければならないものや鶏のささみのようにパサパサとしていてまとめにくいものは嚥下しにくい食べ物です。

また嚥下反射が起きやすいのは温かいものより冷たいものです。体温くらいだと刺激が乏しいため、なかなか嚥下反射が起きません。温度に関わらず溶かすだけでヨーグルト状のとろみがつけられる増粘剤も販売されています。

要介護者にとって一般的に食べにくいとされているのは固いもの(豆、肉など)、パサパサするもの(クッキーなど)、弾力が大きいもの(かまぼこなど)、口の中でまとまりにくいもの(硬いものの刻み食など)、水分の中に粒が浮いているようなもの(硬い食材が入った味噌汁やスープなど)、口の中で動きが早いもの(水分)などです。

①飲み込みが悪い方に対して

・素材、製品そのものが柔らかい食物を選ぶ(豆腐、ゼリーなど)。

・長時間煮込む。圧力鍋などを利用した調理法で柔らかくする。

・とろみをつける。あんかけ、ホワイトソースや増粘剤などを使用する。

・ミキサーを使い食べやすくする。

②噛む力が弱い方、入れ歯がない方、入れ歯が合わないため噛むことが困難な方に対する工夫

・素材そのものが柔らかい食材を選ぶ

・薄い野菜(レタスなど)、硬いわかめなどは避ける。

・食べ物を細かく刻む。

③水分でむせる方

・むせやすい汁物を特定しとろみをつけるなどの工夫をする。牛乳はむせにくい方が多く、逆に塩分の入った味噌汁やスープなのでむせる方が多いようです。

・水分に形のある具材が入っているものは危険なので避ける。(わかめなめこ入りの味噌汁、粒の残るお粥など)

・飲むペースを調整してあげる。

また介護の際には使いやすく危険の少ない食器に変えましょう。自分で食器を持って食べている方でもひと口量や食べるペースの調整ができなくなっているケースもあります。そのような形がカレー用スプーンなどの大きいスプーンで食事をすると食器は凶器に変わってしまいます。大きいスプーンを使用して介護者中心のハイペースな介助をすると誤嚥や窒息を引き起こす危険性があるので注意が必要になってきます。

嚥下障害のある方への食事介助のやり方は、食事中においては、口の中がきれいでもまだ食物が喉に残っていることがあります。次々に食事を口腔内に運んでしまうと、喉の奥が容量オーバーとなり誤嚥をしてしまうことがあります。再び食物を口に運ぶ前に、12回空嚥下をさせることが大切です。

このように食べ物を喉から完全になくなるようにしてから次の食物を運ぶようにしてください。空嚥下はだんだんやりにくくなるので、ティースプーンですくった水を飲んでもらいとやりやすいです。これは水で咽頭に溜まったものを洗い流すのではなくあくまでも空嚥下をしやすくするためのものです。

また右下を向いて空嚥下をし、次に左下を向いて空嚥下させてください。頭ゆっくり後方へ進展させ、それから前屈してうなずくような形で空嚥下します。

こうすると部分的に喉の食物が通る通路が広がりますので、溜まった食物をきれいに飲み込むことができます。

毎回、空嚥下をさせるのは大変なので3回食物を口に運んだら1回の空嚥下をしたり声がガラガラ声になってきたときに、体を休めてから嚥下をさせるなど的に行うのが良いと思います。

<食べるときの姿勢や体位について>

食事の姿勢はもちろん座位が基本です。要介護者の生活のメリハリをつけるためにも、ベッドの上ではなく食卓で食事をするように努めたいものです。

座位での注意点は前かがみになりすぎないことです。前かがみになりすぎると腹筋が使いにくく呼吸がしにくくなります。その姿勢だとむせやすくなるので背中と背もたれの間にマットを挟んで、背筋をある程度伸ばすように心がけます。

麻痺のある場合は麻痺側に体が傾きがちなので、肘掛けと体の間にマットを当てて傾斜を防ぎます。麻痺した上肢も下げたままではなく膝の上やテーブルの上に置きます。

背もたれに寄りかかるのは良いのですがのけぞるようになって首が後方に伸びてしまっていると嚥下時の喉の上下運動がしづらいので、誤嚥や窒息を引き起こしやすくなります。介助者は、本人と同じ高さの目線にして、首を後ろに反り返らせることなく介助をしてください。このように食事の体位を工夫してみます。

30度程度仰向けをとれば重力の関係で口から食事がこぼれ出る事はなくなり、喉の方向へ食べ物を送り込みやすくなります。解剖学的にも気道より食道が下になりますので、気道へ誤って食べ物が運ばれる確率も少なくなります。

また、枕を使って頸部を前屈させます。これは喉から気管への通路が屈曲することにより誤嚥しにくくなるからです。片麻痺のある方でどうしても寝たままでなければ無理な場合は麻痺していない側を下にした横向きの状態にします。重力の関係で麻痺していない側の口や喉や食事が迎えやすくなり、誤嚥しにくくなります。そして飲み込みやすくなるようなら徐々に体を起こして座位に近い状態に持っていきます。このようにして要介護者への食事の取らせ方も工夫しながらやっていきましょう。

誤嚥を防ぐための運動についても後日お話しします!

今日は摂食・嚥下のお話をさせていただきました。何かお困りのことがありましたら当院スタッフまでご相談ください。