ブログ
予防接種について
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。
本日娘の予防接種に行ってきました。医療従事者もワクチン接種が推奨されています。今日は、ワクチンの種類とその病気についてお話ししていきます。
わが国では医療従事者へのワクチン接種は法的に規定されていません。そこで、いろいろな文献より考えて、どの感染症に対するワクチン接種が推奨されるかを述べてみましょう。アメリカ予防接種諮問委員会( ACIP )では、医療従事者に必要なワクチンを表のように分類しています。
①医療従事者全員に推奨
B 型肝炎ワクチン、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、水痘ワクチン、ムンプスワクチン
②特殊な環境下の医療従事者に推奨
BCG ワクチン、百日咳ワクチン、 A 型肝炎ワクチン、天然痘ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、腸チフスワクチン
③成人全員に推奨
ジフテリア/破傷風ワクチン、肺炎球菌ワクチン
この中でも、①医療従事者全員に推奨についてお話ししていきます。
B 型肝炎ワクチン
B型肝炎は、肝臓に慢性的な炎症を引き起こし、肝硬変や肝臓がんなどの重篤な合併症を引き起こす可能性があるウイルス感染症です。B型肝炎ワクチンは、新生児や乳幼児、青少年、成人など、さまざまな年齢層で推奨されています。一般的には3回の投与が必要で、初回の投与後に1〜2ヶ月間隔で追加の投与が行われます。一度ワクチン接種を正しく行うと、長期的な免疫が維持されます。
B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介して感染して起きる肝臓の病気です。HBVは感染した時期、感染したときの健康状態によって、一過性の感染に終わるもの(一過性感染)とほぼ生涯にわたり感染が継続するもの(持続感染)とに大別されます。持続感染になりやすい状況というのは、出産時あるいは3歳未満の乳幼児期の感染です。HBVの感染経路は垂直感染と水平感染に分けられます。垂直感染というのはお産の時に母体から生まれた子供に感染が起きることを言います。水平感染というのは垂直感染以外の経路による感染です。
- 傷のある皮膚への体液の付着
- 濃密な接触(性行為など)
- 静注用麻薬の乱用
- 刺青
- ピアスの穴あけ
- 不衛生な器具による医療行為
- 出血を伴うような民間療法
- その他
などがあります。
2016年4月1日以降に生まれた全ての0歳児にHBVのワクチンが接種されるようになりました。ワクチンを打って抗体が陽性になればHBVに感染することはありません。また、HBVにはジェノタイプ(genotype)という、少しずつ違うタイプのウイルスがあります。日本に多いのはジェノタイプC、次いでジェノタイプBでしたが、最近欧米で多いジェノタイプAの感染が増えてきています。このジェノタイプAのHBVは成人が感染しても持続感染になる率が少し高いことが知られています。
B型肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎の大きく2つに分けられます。
(1)急性肝炎
感染して1~6ヶ月の潜伏期間を経て、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などが出現します。典型的な症状の症例では、尿の色は 濃いウーロン茶様であり、黄疸はまず眼球結膜(目の白目の部分)が黄色くなり、その後皮膚も黄色みを帯びてきます。症例の中には、肝炎の程度が軽くて、自分では気が付かないうちに治ってしまう例もあります。しかし、中には、激しい肝炎を起こして生命を維持できない状態(肝不全)となる、いわゆる劇症肝炎になることもあります。一般に、劇症化に至らない場合には、数週間で肝炎は極期を過ぎ、回復過程に入ります。発症時には後述のHBc抗体、HBs抗原、HBe抗原が陽性となりますが、1~2ヶ月でHBs抗原、HBe抗原は陰性化し、その後HBe抗体、HBs抗体が順次出現します。しかし、HBe抗体やHBs抗体が陽性にならない症例も時々みられます。
(2)慢性肝炎
出産時ないし乳幼児期にHBVが感染すると、幼い体の免疫系はウイルスを病原体と判断できず、持続的にウイルスが存在し続ける状態(持続感染)に移行します。生後数年~数十年間は肝炎は起きないで、感染したHBVは排除されずに体内で共存しており、この状態を無症候性キャリアと言います。このころのウイルス量は血清1mlに107~9と高い場合が多くなります。思春期を過ぎると自己の免疫力が発達し、HBVを異物であると認識できるようになり、白血球(リンパ球)がHBVを体内から排除しようと攻撃を始めます。この時リンパ球がHBVの感染した肝細胞を壊すことにより肝炎が起こり始めます。一般に10~30歳代に一過性に強い肝炎を起こし、HBe抗原陽性のウイルス増殖の高い状態からHBe抗体陽性の比較的ウイルスが少ない状態に変化します。HBe抗体が陽性になるということは、体がウイルスに対してある程度抵抗力を備えたということを意味します。HBe抗体陽性となった後は、多くの場合肝炎はおさまっていきます。このように思春期以降に一過性の肝炎を起こした後は、そのまま肝機能が一生安定する人がおよそ80~90%ですが、残りの10~20%の人は肝炎の状態が持続します(慢性肝炎)。肝臓は再生能力の高い臓器で、肝移植に健康な肝臓を半分提供しても、数週間後には肝臓の大きさは提供前の8割以上のサイズに戻ります。しかし、ドナーとして1度きり提供するのと違って、慢性的に細胞が壊れ続けると、傷跡のような線維化という状態が生じるようになります。線維化が進行して固くなってしまったのが肝硬変で、再生した肝細胞の集団が再生結節という細胞の塊を作ります。再生の勢いが強すぎてブレーキが効かなくなると肝細胞癌になる人も出てきます。
麻疹風疹ワクチン(MRワクチン)
麻疹(はしか)、風疹を予防するワクチンです。このワクチンの接種により麻疹、風疹に対する抗体ができ、かかりにくくなります。近年は麻疹、風疹が成人で流行しています。成人がかかると重症になることが多く、とくに妊娠初期の妊婦が風疹にかかると赤ちゃんが先天性風しん症候群という病気を持って生まれる危険性があるため、成人にも接種が推奨されています。
<麻疹>
麻疹ウイルスによって発生する急性の全身感染症です。感染力がとても強く、空気感染、飛沫感染、接触感染で広がります。主に、高い熱や全身の発疹、せき、鼻水、目の充血などの症状がでます。肺炎、中耳炎を合併しやすく、先進国であっても1,000人に1人が死亡すると言われています。
<風疹>
風疹ウイルスによって発生する急性の発疹性感染症です。ヒトからヒトへの飛沫感染により強い感染力を持ちます。症状が現れない場合もあれば、重篤な合併症(脳炎など)を併発する場合もあります。
水痘ワクチン
水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹を予防することが可能なワクチンです。
1回の接種で水痘にかかるのを80-85%減らすことができ、重症化をほぼ100%防ぐことができるとされています。1回の接種では重症化は防げますが、水痘にかかった場合に水痘の集団発生の原因となってしまいます。2回の接種を行うことで一人一人の予防効果を高めるだけでなく、長期間の集団での流行を予防することができ、免疫不全の人や妊婦など水痘ワクチンを打てない人を守ることにもつながります。
過去に水痘や帯状疱疹(などにかかったことがある人は病気が治ってもウィルスが潜伏しており、成人や高齢者になって免疫が低下した時に帯状疱疹を発症する危険性があります。50歳以上に対する帯状疱疹予防として、過去に水痘にかかったことがある人、帯状疱疹にかかったことがある人に水痘ワクチンを接種すると抗体が増えることが分かってきました。帯状疱疹後神経痛は重症な帯状疱疹になった後に神経の痛みが残る後遺症で、なかなか治りにくいことが知られています。50歳以上で、水痘ワクチンを接種することで帯状疱疹後神経痛の予防として期待されます。
日本では2014年に小児水痘ワクチンが定期接種化されてから、水ぼうそうになる子どもたちが激減しました。5歳未満の報告数が顕著に減少し、水ぼうそうになる子どもたちのうち5歳未満の割合は2000年〜2011年が77%だったことに比較し、2020年は34%に減少しました。一方で5-9歳が半数を占めるようになってきました。
ムンプスワクチン(おたふく風邪)
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)を予防するワクチンです。このワクチンの接種によりムンプスウイルスに対する抗体ができ、おたふくかぜにかかりにくくなります。
<流行性耳下腺炎>
ムンプスウイルスによって耳下腺が腫れる病気です。主に上気道を介して飛沫感染し、両側又は片側の耳下腺が腫脹しあごの痛みや発熱を伴います。髄膜炎、脳炎、膵炎、難聴などの合併症に注意が必要です。おたふくかぜによる難聴は「ムンプス難聴」と呼ばれ、永続的な障害となることがあり重要な合併症のひとつです。ムンプス難聴は、ワクチンで予防できる唯一の難聴と言われます。
歯科医院はもとも感染対策を徹底しております。さらに、歯科医院で働く医療従事者は感染症の予防接種を行っています。どうぞ安心してご通院してください。