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根分岐部病変について
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は歯周病について、その中でも根分岐部病変についてお話しします。
歯周組織に悪影響を与える要因として、
- 深い歯周ポケット
- 骨の形態異常
- 根分岐部病変
- 歯肉-歯槽粘膜の問題
- 欠損部歯槽堤の形態異常
- 歯肉縁下カリエス
- 歯牙の位置異常
があります。その中で根分岐部病変についてお話しします。
【目次】
1.根分岐部病変とは
2.根分岐部病変の分類
3.根分岐部病変の原因
4.根分岐部病変の治療法の種類
1.根分岐部病変とは?
歯周病の進行に伴う骨の喪失により、根間部の歯周組織が喪失することを根分岐部病変と呼びますが、その部位にはプラークが停滞しやすく清掃が困難となるため症状が悪化しやすいです。またさまざまな原因や誘発因子が考えられるため、その診断は難しく、歯周治療の中でももっとも治療の難しい分野です。とくに診断、術式の選択、スプリンティングの範囲、メンテナンスの方法などに注意を払わなければならないです。
<根分岐部の解剖学的考察事項>
①エナメル突起(エナメルプロジェクション)
分岐部情報からエナメル質が伸びている状態で、これは上下顎大臼歯に高頻度で認められる現象です。エナメル突起が存在するとその部位には結合組織付着が存在せず、プラーク蓄積により歯周炎が進行し、アタッチメントロスが生じやすくなります。Greweらの文献によると、エナメル突起の存在を次のように分類しています。
エナメル質が根分岐部病変にわずかに伸びている状態
エナメル質が根分岐部病変にまでいたっていない状態
エナメル質が根分岐部病変にまで伸びている状態
歯周外科では切除療法でも再生療法においてもこの部分を削除して根面のセメント質を露出させ術後歯周組織の健全な付着を期待する方法が取られます。
②Bifurcation Ridge
分岐部の近遠心的形態はX-ray写真で確認できますが、頬舌的形態は分かりにくいです。この部位に形成された下顎大臼歯に近心根と遠心根を結ぶ隆線のことをBifurcation Ridgeと呼びます。この隆線は分岐部がいったん口腔内に露出するとプラークの除去が困難になる原因の一つとなります。必ずしも頬舌的中央に存在するとは限らず、頬側または舌側に一つまたは複数存在することもあります。いずれにしても今分割などを行った場合、清掃性を考えてこの部分を平坦に削除することにより治療後の予知性を高めるこのになります。
2.根分岐部病変の分類
根分岐部病変は根間部の歯周組織の喪失に伴って起こり、水平的・垂直的に分類しそれぞれの状態に応じた治療術式を選択する臨床的指標として利用されています。
①水平分類
Lindheの分類が現在もっとも代表的な分類である。
Ⅰ度
頬舌的に骨の1/3以下の欠損
Ⅱ度
頬舌的に骨の1/3以上欠損しているが、
完全には貫通しない
Ⅲ度
頬舌的に完全に貫通する
②垂直分類
A:垂直的骨欠損が1~3mm存在する
B:垂直的骨欠損が4~6mm存在する
C:垂直的骨欠損が7mm以上存在する
垂直分類は単独で用いられることはなく水平分類と垂直分類を併用して用いるのが一般的となっています。
3.根分岐部病変の原因
根分岐部病変の治療を始める前に必ずその原因を考えなければなりません。歯周炎によるものばかりではなく、根管内からの感染も考えられます。歯周組織にわずかな炎症しかなくても過大な咬合力により根分岐部の歯周組織の破壊が急速に進むこともあります。根管治療寺時のパーフォレーション、ポスト・コアのパーフォレーション、歯根破折なども原因になります。またカリエスが髄床底まで波及した場合などは歯根分割などの処置が必要となります。
<根分岐部病変の原因>
- プラーク由来の炎症性病変
- 咬合由来
- 根管由来
- 合併症
- 歯質の損傷によるもの(カリエス、歯根の穿孔、歯根破折など)
4.根分岐部病変の治療法の種類
根分岐部病変の進行の程度により三段階に分類します。
Ⅰ度
スケーリング・ルートプレーニング
フラップキュレッタージ(modified Widman flap法)
ファーケーションプラスティ
Ⅱ度
フラップキュレッタージ(modified Widman flap法)
ファーケーションプラスティ
歯根分割
抜歯
再生療法(GTR法、骨移植、EMDなど)
クエン酸処理、テトラサイクリンなどによる根面処理
Ⅲ度
歯根分割
トンネリング
抜歯
治療方法を選択するためには、単に根分岐部ん侵襲の程度だけではなく以下の要因を統合して判断する必要があります。
- 根分岐部病変の程度(水平、垂直)
- 残存骨量
- 歯牙の動揺度
- 有髄か無髄か
- 歯冠修復の有無、必要性
- 隣在歯の状態
- 咬合関係(対合歯の有無、状態)
- 時間的要素
- 患者さんの理解度、協力度、患者さんの希望
- 解剖学的形態(歯根の長さ、太さ、形態、湾曲度、歯冠歯根比、根の離開度、その他)
治療方法の選択には複数の要因を考慮しつつ、十分な検討が必要です。
歯周外科治療を行い、他では抜歯と言われた歯牙も頑張って保存することが可能な場合もあります。精密検査診断を行い、残念ながら抜歯に至るケースもありますが、少しでも不安がある方はまずは一度相談にお越しください。お待ちしております。