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妊婦と歯科疾患について2
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は、昨日に引き続き妊娠中の健康管理についてお話しします。今日は歯周病の与える影響についてお話しします。
①歯周病と低出生体重児
以前、歯周病になると低出生体重児や早産のリスクが上がるとお話しましたが、これもプロスタグランジンが関係しています。プロスタグランジンには様々な働きがありますが、その働きの中に「筋肉(子宮筋)を収縮させる」というものがあります。実際、陣痛誘発や陣痛促進のために投与するお薬として使用されます。
歯周病が悪化すればするほどプロスタグランジンが増えていき、子宮筋の収縮を引き起こし早産になるリスクが上がってしまうのです。歯周病がある方の早産のリスクはない人に比べ5~7倍と言われています。早産のその他の原因であるタバコやアルコール、高齢出産よりもはるかに高い数値です。また、お口の中で増殖した歯周病菌が血液に乗って移動し子宮や胎盤に感染するとお腹の赤ちゃんの成長不足がおこると考えられ、日々研究されています。
プロスタグランジンは、人体の多くの組織や器官に存在し、さまざまな役割を担っているホルモンです、具体的には、血圧低下、筋肉の収縮作用、黄体退行作用、血管拡張作用などがあります。プロスタグランジンは今から80年ほど前に、血圧を下げ、子宮筋を収縮させる作用を有する物質として発見されました。この発見は大きなインパクトを与えるもので、1982年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。プロスタグランジンは重要な生理活性物質で、体のあらゆる部分に存在し、筋肉の収縮や弛緩、血液の凝固などを調節するもので、現在、わかっているだけでも30種類以上があります。プロスタグランジンの多様な働きが注目され、古くから薬としての活用法が模索されてきました。
早産の予防のために、歯周病の治療や予防は大切です。毎日の歯みがきがもっとも重要ですが、歯科医院で歯周病の治療や、定期的な歯のクリーニング(PMTC)を行い、歯石や日常の歯みがきでは取りきれない汚れを除去してもらうことが大切です。
②妊娠性歯肉炎
妊娠性歯周炎は、妊娠期のホルモンバランスの変化に伴っておこる歯周病です。特徴としては、
・口腔内全体に起こる
・妊娠初期に起こりやすい などが挙げられます。
<口腔内全体に起こる>
普段はきれいに磨いていても、つわりや食事回数の変化などによりいつも通り磨くことができず磨き残しが起きてしまい炎症が起こってしまう場合があります。いつも通り磨いているのに全体的に炎症がでてくる場合は、ホルモンバランスの影響によるものが考えられます。
<妊娠初期に起こりやすい>
妊娠初期に起こりやすいと言われています。歯肉の腫れであれば、その部位の歯磨きを丁寧に行い、食後にも可能な限り磨く習慣をつけることで炎症が改善していきます。つわりなどで磨きにくい時もあるかと思いますので、体調が悪くない時にマッサージをする感覚で磨いてください。
※妊娠性エプーリス※
エプーリスは歯肉腫ともいわれ、歯肉(ulis)の上(ep)という意味を表します。歯肉に生じた限局性腫瘤のうち、良性の線維性組織の増殖あるいは肉芽腫を総括した臨床名として用いられています。上顎が下顎に比して約1.5倍多く、唇側に多く、特に歯間乳頭部に発現しやすいです。原因としては、
・不適合修復物や充填物、補綴物など器械的刺激
・残根や歯石、歯肉縁炎などの慢性炎症性刺激
・女性ホルモンなど内分泌の異常関与 などがあります。
妊娠性エプーリスの場合、妊婦さんの0.5~1.2%にみられることがあると言われています。出産後に自然に治ることもあるため、妊娠中に外科的処置を無理にする必要はありません。薬の処方もない場合が多いです。ただ、炎症が大きくなる、出血がある、痛みがひどいなど悪化傾向にある場合は、処置が必要な場合が多いです。
③治療を受けるタイミング
妊娠中でも歯科治療は可能です。ただタイミングをしっかりと見極めて、影響の少ない時期に行うべきです。また可能であれば出産前に治療することをお勧めします。出産後は育児などで忙しくなり、お子さん優先になり自分の治療は後回しになってしまうからです。妊娠、出産以降なかなか歯科に通院できなくて口腔内が一気に悪化してしまう方も多くいらっしゃいます。虫歯などを残したままではなくしっかり治療を行い健康な状態で子育てに入りましょう。また、口腔内細菌は母体を通して胎児にまで影響を与えてしまいます。妊娠中、妊娠前から口腔内ケアの習慣がついている方ほど、お子さんのリスクも低くなります。
では、とのタイミングが治療可能なのか?当院ではなるべく母体への影響の少ない時期に治療を行っています。
<妊娠初期>
妊娠1週から15週までの妊娠初期は、可能な限り口腔内の衛生指導のみにしています。もちろん激しい痛みなどによるストレスは胎児にとって悪影響を及ぼすため緊急治療は行いますが、妊娠初期は分割や発育がもっとも起こる時期になります。流産や奇形、発育の抑制の可能性も高いため投薬なども可能な限り行いません。
<妊娠中期>
妊娠16週から27週までの妊娠中期は、つわりなどの症状も落ち着き、通常の治療が可能な時期になります。ただ妊娠中はあまり積極的な治療(外科処置や観血処)はなるべく控えるようにしています。
<妊娠後期>
妊娠28週以降は応急処置のみにしています。刺激による早産のリスクもあるため、ユニットでの体位により腹部に圧力が集中しないよう注意しながら口腔内の衛生指導を行うようにしています。
妊娠中・授乳中・妊娠の可能性や予定のある方は事前に同意書の記入をお願いしています。
母体を守るための緊急治療は行なっています。麻酔も出産や帝王切開時に使うのと同じものになります。また、投薬も母子共に影響の少ないものを使用しています。問診票などで事前に確認はしていますが、この先予定のある方も教えていただければ助かります。治療のペースや回数なども間に合うよう調整できればと思います。
将来生まれてくる赤ちゃんのためにも、またご自身の健康のためにも妊娠中から口腔内のケアをしっかり行いましょう。自分だけで不安なときはいつでもお越しください。体調に無理せず、可能なことから始めましょう!