ブログ
歯科麻酔の副作用について
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。昨日、妊娠中の治療のタイミングなどについてお話ししました。使用可能だとしても極力控えた方がいいのは事実です。今日は歯科麻酔薬の副作用などの注意点についてお話ししていきます。
【目次】
1.歯科麻酔とは?
2.歯科麻酔の副作用について
3.歯科麻酔の偶発症について
4.麻酔をうける時は
1.歯科麻酔とは?
虫歯治療の際、痛みを軽くするためによく麻酔が用いられます。歯の治療において、神経を取る際、詰め物をするために虫歯を削る場合、抜歯するときなどに、麻酔は使われます。痛みを感じさせないようにして、治療を快適にスムーズに行なうためです。麻酔液を体温の温度に近づけたり、麻酔を打つときにできるだけゆっくり注入するだけでも痛みを軽減できます。また表面麻酔を使えばほとんど刺入の痛みもコントロール可能です。一般的に行われる麻酔は、口腔周囲にのみ効く部分麻酔になります。(口腔外科などでの侵襲の大きい治療の場合、全身麻酔を併せて行うこともあります。)麻酔の種類については過去の記事を合わせてご確認ください。
2.歯科麻酔の副作用について
体内に入り代謝される薬物には全て作用副作用があります。歯科麻酔の場合は、ほとんどの場合が副作用が起きることなく(症状として気付かないうちに)経過していますが、時に麻酔に含まれる成分(リドカイン塩酸塩、アドレナリン)によって、血圧上昇や吐き気といった副作用が起こることがあります。麻酔による副作用は以下のものがあります。
①動悸
麻酔に含まれるアドレナリンは、血管を収縮させることで、麻酔を局所に止める働きをします。しかし心拍数を増加させる作用もあるため、動悸が起こることがあります。高血圧の方や心疾患の方はアドレナリンの入っていない麻酔薬を使います。
②頭痛
アドレナリンによる血管収縮が起こると、血圧を上昇させます。その結果、頭痛を感じることもあります。
②吐き気
不安や緊張が強かったり、痛みがトリガー(引き金)となり、脳貧血を起こして気分不良や吐き気を催すことがあります。
④手足の震え
脳貧血の症状として手足の震えが出ることもあります。脳貧血の場合には、頭に血流が行きやすいよう、診療台を水平にし、頭をやや下げ、足を上げると症状は落ち着きます。
3.偶発症について
①ショック
「デンタルショック」「疼痛性ショック」「神経性ショック」「三叉神経迷走神経反射」などと呼ばれます。治療中の痛みを我慢させて治療していると突然患者様が意識を失ってしまうことです。治療中、痛いのを我慢して歯を削られていると交感神経が興奮状態になり脈拍や血圧が上がった状態となります。その状態が長く続くと突然、副交感神経が優位になり脈拍と血圧の低下がおこります。歯科医院での事故の約6割以上を占めています。患者さんに痛みを我慢させないことで予防が可能です。気分が悪くなった中断し、安静にし経過観察をします。意識の回復が遅い場合や重度の場合は救急車を手配します。誰にでも起こる可能性のあるものになります。その日の体調の変化によっても起こるので十分注意しましょう。
②中毒
伝達麻酔の際に、血管内に入れてしまった場合に起こります。心臓がドキドキし興奮状態になり多弁になります。また痙攣をおこすこともあります。伝達麻酔の場合、血管内に針先がないか必ず吸引試験(薬液を注入する前に、麻酔のシリンジを引いて血液が入り込まないかどうか)を行います。これにより予防が可能です。
③アナフィラキシーショック
蜂などに刺された時にも起こるショックです。一回目の注射で抗体ができて2回目の治療でおきます。血管透過性が亢進して、
1.血圧低下と頻脈
2.顔や皮膚が赤くなる
3.気道浮腫ができて呼吸が困難になります。
特別な予防法はありません。アドレナリンと酸素の準備を行うしかありません。歯科医院の安全管理のため、緊急時のアドレナリンと酸素バックに加えてAEDを完備しています。またアナフィラキシーと思わしき症状が出たら直ちに救急車の手配を行います。幼い子でも起こりうる可能性のあるショックになります。麻酔の前に十分説明をして行うようにしましょう。もし起こってしまった際の緊急対策としては、
1.軌道確保
2.酸素投与
3.アドレナリンの筋注 を行い救急車の手配を行います。発症後初期の迅速な対応が重要となります。
麻酔薬自体にアレルギーのある方、添加されている薬物にアレルギーのある方、防腐剤にアレルギーのある方、ひとりひとり違います。事前に問診を行っていますが、麻酔による体調不良を起こした既往のある方はあらかじめ申し出ください。
4.麻酔をうける時は
麻酔を受けるときはどんなに些細な体調の不具合でもいいのであらかじめ教えてください。寝不足、二日酔い、緊張、心労、急いできたのでたくさん汗をかいた、息が上がっている、、、など、普段と違うことがあるときは、麻酔による偶発症が起こりやすくなります。また、そのような場合、麻酔が本来より効きにくい/効きすぎるといったことも起こりやすくなります。
麻酔の効きが悪い状態で痛みを我慢してしまうと、ショックを起こす可能性が高くなりますので要注意です。麻酔直後に心拍が強くなったり、早くなったり、気分が悪くなることもあります。そのような場合、治療を中断し、後日改めて治療を進めるようにしています。あらかじめご了承ください。
歯科麻酔は歯科治療においてあらゆる場面で使用します。副作用や偶発症についても十分注意していますが、心配なことがあればいつでもお申し出ください。アドレナリンや酸素マスク、AEDなども完備していますのでどうぞ安心して通院ください。明日は、緊急時対応についてお話しします。