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気道異物除去
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は、「気道異物除去」についてお話しします。
1.気道とは?
私たちの喉は食べ物と空気の通り道です。食事の際には食べ物の通り道(食道)となり、呼吸の際には空気の通り道(気道)となります。この仕分けをしているのが喉頭です。喉頭は気管の入り口にある器官で、喉頭蓋や声帯があります。喉頭蓋や声帯は呼吸をしているときには開いていて、物をのみこむときにはかたく閉じて食物が喉頭や気管へ入いらないように防ぐ役目をもっています。また、声帯は、発声のときには適度な強さで閉じて、吐く息によって振動しながら声を出します。喉頭には、呼吸・嚥下・発声の3つの重要な働きがあります。
①呼吸
喉頭は気管や肺へとつながっているため、気道:空気の通り道の玄関としての役割も果たします。
②嚥下
喉は気道:空気の通り道であると同時に、食道:食べ物や飲み物の通り道でもあります。喉頭は、喉頭蓋という蓋のような役割を果たす部分があります。食べ物を飲み込むときには喉頭が上前方に引きあがることで喉頭蓋が蓋となり、また声帯が閉じ、気管に飲食物が流入するのを防いでくれます。これにより、食物が喉頭を通して気管に入ってしまうことがなくなります。
③発声
喉頭に付属した左右一対の声帯が振動することで発声できます。声帯は通常の呼吸をしているときは開いているのですが、発声の際には肺から送り出された呼気によって適度な加減で声帯が閉じます。この閉じた声帯が震えることで、私たちは声を出しているのです。
食べ物が喉を通過する時、喉頭挙上筋群と呼ばれる筋肉がのど仏を引き上げることによって、気管と食道の分岐点にある喉頭蓋が気管に蓋をします。この動きで食べ物が気管から肺に入り込むことを防いでいます。この気管に蓋をする動作は、高齢になると喉頭挙上筋群や反射の衰えによって上りが悪くなりタイミングがずれ、食べ物が気管に入ってしまうことが増えます。飲み込んだ飲食物などが食道ではなく気道の方に入ってしまうことを「誤嚥」と言います。また、飲食物ではない“異物”を誤って飲み込んでしまうことを誤飲と言います。
筋肉の衰えで40代からのど仏の位置は少しずつ下がり始め、喉頭蓋で気管に蓋をしにくくなっていきます。70代を過ぎると、さらにのど仏の位置が下がってしまい、誤嚥が顕在化してしまいます。誤嚥性肺炎についてはまた改めてお話しします。
2.窒息とは?
窒息とは、呼吸が阻害されることによって血中酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が上昇して、脳などの内臓組織に機能障害を起こした状態をいいます。成人の場合、餅など食べものをのどに詰まらせることが最も多く、飲み込む力が弱くなったお年寄りでよく起こります。また、飲み込む力が十分に発達していない乳児は、ピーナツや飴などを詰まらせてしまうことがあります。まだ幼い赤ちゃんは、おもちゃや硬貨など何でも口に入れてしまい、のどに詰まらせることがあります。
窒息の最初の症状はせきこむことですが、完全にのどに物が詰まると声が出なくなります。のどのあたりを両手でかきむしるような動作をすることもあります。いびきのような音を出し、徐々に呼吸が弱くなることもあります。顔が真っ青になったり、けいれんを起こしたり、意識がなくなることもあります。
チョーキングサイン
食べ物がのどに詰まった際、周りの人に詰まったことを知らせ助けてもらうためのサインです。全世界共通で海外でも使用できます。窒息したときは声を出せません。まず咳を促しますが、ダメならかなり緊急事態です。咳が異物除去の最も有効な方法ですが、咳が出ない場合は助けを呼びます。人が周りに来たらその次に救急車を呼びます。
3.異物除去法
①背部叩打法:背中をたたく
立っていられる人ならその方の背後に回り背中(肩甲骨の間)を連続で4~5回手のひらの付け根でバンバン叩きます。意識のない場合、または立っていられない方なら、自分のほうに横を向かせ、同じように背中を叩きます。子供の場合、太ももに乗せて背中をたたきます。乳児の場合、手のひらであごを押さえて背中を叩きます。背中を叩いて出てきたものが気道を埋めないように口は下、または横に向かせることが重要となります。
②ハイムリック法(上腹部突き上げ法)
傷病者の後ろにまわり、両方の手を腋から通し、片方の手で握りこぶしを作りみぞおちに当てもう片方の手で握り、体を密着させて腕で両脇を絞り込みながら、こぶしを上・内側方向に瞬時にひきあげます。
※ハイムリック法を行ってはいけないケース
・意識のない人
・乳児
・新生児
・妊婦さん
③乳児の場合
背部叩打法と胸骨圧迫(胸部突き上げ)を交互に数回繰り返します。乳児は液体による窒息が多いので、頭部を下げて行うことが推奨されています。
意識も自発呼吸もない乳児に対しては、まず仰向けにし、下顎を挙げて気道の確保を行います。人工呼吸を2回施行後、片手で胸部と下顎をしっかりと支え、頭は体より下になるように保持して、背部を数回叩打します。次に患児を指2本で胸部圧迫を数回行い、次いで片手で口をあけ異物を探し、異物が確認できた時は指でこれを掻き出します。異物が排出され、自発呼吸が戻るまでこの操作を繰り返し行います。
「声が出せない」、「呼吸音が聞こえても、ゴロゴロ、ヒューヒューと音がする」等の症状を認めた場合には、異物による気道閉塞が疑われます。咳をすることが可能であれば、咳が異物除去に最も効果があるのでできるだけ咳をさせます。しかし、咳ができず呼吸も出来ないようであれば異物除去法を試みましょう。発見時すでに意識がない場合、また異物除去法を実施中に意識がなくなった場合には、心肺蘇生法に着手しましょう。
お子様から高齢者まで、窒息の原因は日常の中に多くあります。もし万が一見つけた場合迅速に対応しましょう!