ブログ
歯髄について
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は昨日の続き、歯髄についてお話しします。
【目次】
1.歯髄について
2.歯髄の診断について
3.歯髄の検査について
1.歯髄について
歯髄(しずい dental pulp)とは、俗にいう歯の神経のことです。歯の中心に位置し、象牙質で囲まれた歯髄腔にあります。歯髄腔とは歯の神経である歯髄が入っている所です。
<歯髄の構成成分>
歯髄は、歯冠にある歯冠部歯髄と歯根にある歯根部歯髄に分けられます。血液の色により赤く見え、80%の水分と20%の細胞内外の成分を含む有機成分から構成されます。歯髄の発生は胎生8週目(妊娠2ヶ月ごろ)で、歯乳頭の間葉性細胞から始まり、歯冠形成期から切縁や咬頭頂の領域で、象牙質を形成する象牙芽細胞に分化します。分化が根突方向へ進むと、周囲の細胞との区別が明確にされ、やがて歯根象牙質の形成が始まり、歯乳頭が象牙質に囲まれると容積が減少し、歯髄と呼ばれるようになります。
<歯髄の役割>
歯への刺激は、エナメル質から象牙細管に侵入した神経線維と歯髄組織を介して人の脳に伝達されることで知覚します。歯に加わる色々な刺激を感知することより、むし歯などの疾患を痛みで気付かせたり、歯髄内に存在する免疫細胞が細菌に抵抗したり、侵襲に対して第二象牙質を形成するなど、歯髄組織は防御機能の役割も担っています。
2.歯髄の診断について
歯髄の診断をする上で有効なのが、AAE(アメリカ歯内療法学会)の診断名になります。①歯髄の診断と②根尖部の診断を行います。
<①歯髄の状態>
Normal pulp 正常歯髄
歯髄に症状は無く歯髄検査では正常な反応を示す状態。
Reversible pulpitis 可逆性歯髄炎
臨床所見や歯髄検査に基づきその炎症は解消することが可能であり、歯髄は正常な状態に戻ることが可能である事を示している。
Symptomatic irreversible pulpitis 症状のある不可逆性歯髄炎
臨床所見や歯髄検査に基づき生活歯髄に炎症が生じていて治癒が得られない状態。また温度刺激による長引く痛み、自発痛、関連痛がある状態。
Asymptomatic irreversible pulpitis 症状のない不可逆性歯髄炎
臨床所見や歯髄検査に基づき、生活歯で歯髄に炎症が生じており治癒が得られない状態。また、臨床症状は無くその炎症はカリエスやカリエスの削合、外傷により生じる。
Pulp necrosis 歯髄壊死
臨床診断分類では歯髄が壊死している状態。歯髄は通常、歯髄検査に反応しない。
Previously Treated 既根管治療歯
臨床診断分類では以前に歯内療法処置がされており、根管内は貼薬材やその他の様々な根管充填材にて充填されている状態。
Previously initiated therapy 根管治療が着手されている歯
臨床診断分類では以前に部分的な歯内療法処置(断髄や抜髄)処置を受けている状態。
<②根尖部の状態>
Normal apical tissues 正常根尖歯周組織
歯と根尖周囲組織は正常な組織であり打診、触診検査に対して過敏反応を示さない状態。歯根周囲の歯根膜は傷害されておらず歯根膜腔は規則的である。
Symptomatic apical periodontitis 症状のある根尖性歯周炎
通常は根尖周囲組織の炎症であり、咬合、打診、触診に痛みを伴い反応するする。根尖透過像と関連する場合としない場合がある。
Asymptomatic apical periodontitis 症状のない根尖性歯周炎
炎症と根尖周囲組織の破壊を伴い、それは歯髄・根管に原因があり根尖透過像として認めるが、臨床症状を示さない状態。
Acute apical abscess 急性歯周膿瘍
歯髄・根管の感染と壊死に対する炎症反応であり、急激な症状、自発痛、歯に圧をかかった場合の過敏反応、膿瘍形成、関連している歯肉の腫脹を生じることが特徴である。
Chronic apical abscess 慢性根尖膿瘍
歯髄・根管の感染と壊死に対する炎症反応であり、ゆるやかな症状、多少もしくは全くない不快感、Sinus Tract(瘻孔) を介しての断続的な排膿が特徴である。
Condensing osteitis 硬化性骨炎
放散性のレントゲン不透過性の病変は、弱い炎症刺激に対する限局性の骨反応を示し、それは通常、根尖周囲に認められることが多い。
3.歯髄の検査について
①温度診
温度診には冷温診と温熱診があります。温度診とは、歯に熱刺激を加え、痛みの誘発状態から歯髄の異常や歯髄炎の進行状態を調べる診査法です。正常な歯髄では、温度刺激を加えて痛みが生じたとしても刺激を除去した段階ですぐに痛みは消失します。しかし歯髄が炎症を起こしている場合は、冷刺激に敏感になっているため痛みが誘発されるだけでなく、刺激を除去した後も持続するのが特徴です。(持続痛)
冷温診
パルパー
パルパーのスプレーを吹き付けて氷状となったスポンジを歯冠部に当てて痛みを感じるかどうかを確認します。
何秒後に痛みが出現し、何秒持続するかを
温熱診
プラガー
熱したプラガーを歯面に当てて痛みを感じるかどうかを確認します。
歯髄の炎症が進行してくると温刺激に反応してきます。
電気診
歯髄電気診
微弱な電気の刺激を歯に流して、神経が反応しているかどうかを確認していきます。隣在歯に流れてしまわない様、ストリップスなどを挟んでから行います。
偽陽性もあるため一つの検査だけではなく、複数の検査を組み合わせて診断します。
切削診
あまり使用されことはありませんが、歯髄診査などで患歯の特定ができない時に実際に歯を削ることで歯髄の状態を診査します。痛みの有無で、歯髄壊死の診断などが可能となります。
歯髄の状態を正確に診断することが治療計画や予後を判断する上で最も重要になります。正確な診断ができるために必要な検査を行い、治療方針を立ててから治療を行います。