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根管治療について①
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。
今日は神経の治療•根管治療についてお話しします。根管治療とは歯の根管の中にある「虫歯に感染した歯の神経」「細菌」「古い充填材」等を除去していく歯科の治療法です。今日は根管治療の流れ、診断方法や手技などについてご説明いたします。
目次
1.根管治療とは?
2.根管治療の現状
3.基本コンセプト
4.その他コンセプト
5.まとめ
1.根管治療とは
根管治療とは、歯を残すための重要な治療になります。歯の中には「歯髄(しずい)」と呼ばれる神経や血管を含む組織があります。進行したむし歯や外傷によって歯髄が感染したり、壊死したりすると歯髄を取り除く「根管治療=歯内療法」が必要となります。一般的に「神経を抜く」といわれる治療になります。
歯髄を処置するためには、まず歯を切削しないと歯髄にアプローチできず、歯の切削量が多くなるため歯の強度が脆くなってしまいます。しかし、的確な根管治療と、補綴処置で歯の寿命は伸ばすことが可能です。
2.歯内療法の現状
<アメリカ歯内療法専門医による治療>
•病変のない initial treatment(初めての根管治療):90%以上
•病変のある initial treatment(初めての根管治療):80%〜90%
•病変のある retreatment(再治療):70%以上
initial treatmentは、病変の有無に限らず高い成功率になります。
しかし、日本における歯内療法の現状は、initial treatmentであっても成功率50%以下であります。
これはなぜか?
日本の保険制度にも大きく原因があります。日本は国民皆保険により、日本中のどの歯科医院でも歯内療法を受けることが可能です。
しかし日本の健康保険における歯内療法治療では、歯科治療の中で最も時間がかかり大変な処置であるにもかかわらず、保険点数が低すぎます。適切な治療を行うための器具•薬剤•時間•その他コストなどあらゆるものが考慮されていません。そのため保険の範囲内のみで、すべてのコンセプトを達せすることは到底不可能です。
治療を成功に導くためには、根管治療を行う基本的なコンセオプトを守ることが何よりも重要です!当院では、歯を残すために精密根管治療、外科歯内療法、日本では保険の効かない最先端の薬剤の使用も積極的に行います。(自費診療になります。)
3.根管治療の基本コンセプト
まずなにより重要なのは、無菌化処置です!根管内に侵入した細菌感染による病気を治そうとするのに、細菌の侵入を止めないといつまで経っても治りません。泥水で洗濯をしているようなものです。
では、どのように無菌的な環境をつくるのか?それがラバーダムという方法です。
上の絵のように、治療する歯をゴムのシートから出して治療を行うことで、唾液や血液の侵入を防ぐことが可能です。これを行うだけで、治療の成功率が高くなり、回数や時間の短縮にもつながります。日本でのラバーダムの使用率は10%以下と言われています。それが、先ほどの日本の成功率の低さの原因です。
一方アメリカでは、ラバーダム防湿が根管治療のみならず歯科治療を行う上で必要不可欠と言われています。またラバーダムをすることだけが根管への細菌感染を予防する方法と言われています。一度根管内に侵入した異物を完全に駆除することは不可能です。そのため1回目の治療initial treatmentでのラバーダムの使用がとても重要になります。
当院では保険の根管治療でもラバーダムを装着してを行います。しかし、虫歯の状態・残っている歯牙の状態ではラバーダムをかけられないことがあります。
根管治療の難易度を判定する項目に以下のものがあります。
(1)前処置なしでラバーダムの装着が可能
(2)隔壁などの簡単な前処置でラバーダムの装着が可能
(3)歯冠挺出や歯肉切除などの複雑な前処置が必要
ラバーダムをつけられない歯牙に関しては根管治療が不可能、根管治療を行うべきではないです。
どんなに優れた技術でも、最先端の設備でもこの無菌処置のコンセプトが守れていないと、根管治療は成功しません。この無菌下での治療の上に、他のコンセプトが成り立ちます。
4.その他コンセプト
適切な①薬剤の使用、②緊密な仮封、③清潔な器具、④拡大視野での作業、⑤正確に効率的に削る道具、⑥封鎖性の高い充填材などが、さらに治療の成功率を高めます。それぞれのコンセプトについても説明していきます。
①使用する薬剤
根管治療で用いる薬剤は、洗浄剤と貼薬剤の2種類です。
洗浄剤は基本が次亜塩素酸が第一選択です。補助的ま洗浄剤としてはEDTAやクロルヘキシジンなどがあります。
貼薬剤は、水酸化カルシウムになります。
②緊密な仮封
仮封剤は水硬性セメントになります。十分な厚みが確保できない場合、グラスアイオノマーセメントによる仮封を行います。
③清潔な器具
ディスポーザブル(使い捨て)の器具を使用します。繰り返し使用した器具は、根管内での破折にもつながります。
④拡大視野での作業
根管内は非常に細く、小さな根管を見落とさないためにも拡大視野での作業が必須になります。
また、肉眼では見えないところの処置になるため、レントゲンやCTでの根管形態の把握や原因歯•原因根の診断が重要です。
⑤正確に効率的に削る道具
手用ステンレススチール製のファイルと、柔軟性が強く•形状記憶のNi-Ti(ニッケルチタン)製のファイルがあります。湾曲した根管などでは硬い手用ファイルだと追従した根管拡大が困難です。時間も回数もかかりますが、カーブに追従するNi-Tiファイルなら、瞬時に正確に形成が可能です。
⑥封鎖性の高い充填材
根管形成が終わった後、隙間があるとそこは細菌増殖の環境となってしまいます。その空間を封鎖するためにも根管充填材を緊密に詰める必要があります。根管充填材はガッターパーチャと呼ばれるゴムのようなものや、MTAという封鎖製の高いセメントもあります。
形成した根管と同じ形の根管充填材が一番密に隙間を埋めることが可能です。Ni-Tiファイルにはそれぞれの形と一致した根管充填材が作られています。(単一ポイント法)
5.まとめ
先ほども言いましたが、保険治療ではこれらすべてのコンセプトを完全に守りながら治療の質を担保することは不可能です。そのため、自由診療の材料や器具の使用を積極的に提案させていただきます。少しでも長く歯を残すためには自費診療をおすすめします。
全ては患者さんの歯を守るためです。ご理解の程よろしくお願い致します。
この先、実際の診療風景も少しずつアップしながら治療の解説も行います。なにかご質問などあればご気軽に質問ください。