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筋肉について②
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は筋肉についての続きをお話しします。前回の投稿はこちらです。今日は顎関節と筋肉について少し深くお話ししていきます。
1.顎関節について
顎関節症についても以前投稿しましたので合わせてご覧ください。
顎関節は、外頭蓋底に位置する側頭骨下顎窩ならびに関節結節が下顎骨関節突起の下顎頭との間に関節円板を介して構成する滑膜関節です。下顎運動のための顎関節の基本的運動様式は、下関節腔における回転運動と、上関節腔における滑走運動です。すなわち、顎関節は回転のみならず滑走も行える回転滑走関節であり、ヒトの体のなかで顎関節以外にはこのような回転滑走関節は存在しません。回転滑走運動であるからこそ、関節部の可動範囲が小さいにもかかわらず、50~60㎜ほどの大開口を可能とする顎口腔系が成立しているのです。そして、左右の顎関節によるこの回転と滑走の複合運動により、前方運動や側方運動などさまざまな下顎運動が円滑に営まれています。つまり、顎関節は左右両側が下顎骨によって繋がっており、一対をなす複関節として下顎を誘導しています。ヒトの体の中で顎関節以外にはこのような関節は存在せず、このような複関節の構造になっているため咀嚼運動のようなきわめて複雑で、しかも精巧な下顎運動を巧みに制御することが可能となっています。このことが逆に機能的咬合系を構成する顎関節、筋、咬合の下顎運動を含めた三次元的調和を不可欠なものとし、わずかな咬合の不調和でも咬合が下顎頭位を規制するため、顎関節へ大きなメカニカルストレスを加えることにもなっています。
では、周囲筋肉、靭帯、運動についてお話ししていきます。
2.筋肉
(1)表情筋について
1.口輪筋
上唇周囲の筋から起始し、縁部と唇部からなり、口裂を輪状に取り巻きます。下唇部の口輪筋と協働し口裂を細め口を閉じたり口唇を前方に突出させる機能があります。
2.口角挙筋
上顎骨の犬歯窩から起始し、口角部上唇の筋に停止すします。口角と上唇を上方へ牽引します。
3.上唇挙筋
眼窩下縁(眼輪筋)から起始し、上唇と鼻翼の一部に停止します。主に上唇を挙上します。
4.上唇鼻翼挙筋
上顎骨の前頭突起(眼輪筋)から起始し、上唇と鼻翼に停止します。上唇と鼻翼を挙上し、上唇挙筋や小頬骨筋などと協働して鼻唇溝を深く表現する。
5.口角下制筋
下顎底起始し、口角部と下唇に停止します。口角と下唇を下方へ牽引します。
6.下唇下制筋
下顎底から起始し、下唇に停止します。下唇を外下方へ牽引します。
7.オトガイ筋
下顎骨の側歯歯槽隆起から起始し、オトガイの皮膚に停止します。下口唇部とオトガイ部の皮膚を上方へ牽引します。また、口輪筋と協働して下唇を前方へ突出させます。
8.大頬骨筋
頬骨弓の外面から起始し、口角部に停止します。口角を後上方に牽引します。
9.小頬骨筋
頬骨外側面(眼輪筋)から起始し、上唇部に停止します。上唇を後上方へ牽引します。
10.笑筋
咬筋筋膜から起始し、口角部に停止します。口角を後外方へ牽引します。微笑んだ際のえくぼ形成に関与します。
11.頬筋
下顎体、上顎体の歯槽突起の後端ならびに頬咽頭筋膜から起こり、前方へ走行し、口角部に集合して他筋とともにModiolousを形成します。さらに上下の筋線維は交叉して口輪筋の深層に入ります。口角を後方へ牽引します。また、口輪筋と協働して、咀嚼時に唇頬側から食品を歯列方向へ抑え込んだり頬側へ溢れる出た食品を歯列へ戻す機能も果たしています。
(2)咀嚼筋について
前回の投稿をご覧ください。
3.靭帯
顎関節周囲の靭帯についてです。
1外側靭帯
2蝶下顎靭帯
3茎突下顎靭帯
1.外側靭帯
顎関節の主靭帯で、側頭骨の頬骨突起と関節結節に起始し、下顎頭外側端直下と後方に付着する比較的強靭な靭帯で、下顎頭の外側への逸脱を防止し、下顎頭の過度な前進、後退を規制しています。形状は側頭骨外側部の起始部で幅が広く、下顎頭頸部外側と後綾部の停止部で幅が狭い三角形をなし、下顎頭の最前方位では後部線維が主に作用して過度の運動を制限しています。
2.蝶下顎靭帯
副靭帯の中で、錐体鼓室裂、蝶形骨棘と下顎骨内面の下顎小舌など下顎孔周囲との間を走行する蝶下顎靭帯は、開口及び下顎の側方運動の規制に働きます。
3.茎突下顎靭帯
側頭骨茎状突起と茎突舌骨靭帯より起こり、下顎角から下顎枝後縁に付着する茎突下顎靭帯は、下顎の前方移動の規制に働いています。
4.運動
<正常な下顎運動とその経路の特徴>
①約20㎜前方へ滑走する
②屈曲のない滑らかな経路を描く
③側頭骨関節結節に沿って下へ凸の彎曲を示す
④開閉口時に左右の顆頭は調和して同時に移動し、回転と滑走のタイミングも左右同じである。
⑤径路と復路がほぼ一致している
⑥最大開口位で下顎は最前方位をとり、側頭骨関節結節にそって上方へ向かう
⑦下顎頭が側頭骨の関節結節最下点を越えた後、最大開口した下顎頭最前方位に至るまで、バイラミナゾーン上層などによる著名な運動抑制は認められない。
開口量が著しく少ない場合や顎関節の動きがスムーズいかない場合、関節円板の動きや周囲筋肉の不調和:顎関節症の可能性があります。
<顎関節症の症型分類>
1.顎関節症Ⅰ型:咀嚼筋障害(masticatory muscle disorders)
→咀嚼筋障害を主徴候としたもの
2.顎関節症Ⅱ:関節包・靭帯障害(capsule-ligament disorders)
→円板後部組織・関節包・靭帯の慢性外傷性病変を主徴候としたもの
3.顎関節症Ⅲ型:関節円板障害(disc disorders)
→関節円板の異常を主徴候としたもの
(a)復位を伴うもの
(b)復位を伴わないもの
4.顎関節症Ⅳ型:変形性関節症(degenerative joint diseases,osteoarthritis)
→退行性病変を主徴候としたもの
<顎関節症の症状>
•3つの特徴的な症状
①痛み
②開口障害
③顎関節のあたりで音がする
•その他
①歯の咬み合わせが変
②耳鳴りがする
③肩こり、首のもりがひどい
④顎関節やその周囲が腫れている感じ
⑤めまいがする
⑥目の奥が痛い
⑦さまざまな不定愁訴
まずはその痛みが噛み合わせが原因で起こっているのかどうかの鑑別診断から始まり、筋肉のリラックスをさせ、補綴や噛み合わせを作っていきます。噛み合わせの不調和から起こる症状は治るのに回数と期間がかかります。すこしでも気になる方、お悩みの方はご気軽にご相談ください。