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接着について①
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は歯科治療では必須の接着についてお話しします。
【目次】
1.CR直接修復における接着
2.間接修復における接着
1.CR直接修復における接着
CR:コンポジットレジン修復についての過去の記事も参考にしてください。
直接修復における接着について歯質接着の基本的メカニズムからお話ししていきます。
歯質接着の基本的メカニズム
接着とは「接着剤を媒介とし、化学的もしくは物理的な力またはその両者によって二つの面が結合した状態」と定義されます。これは、接着剤で有名なセメダインのHPに記載があります。
接着のメカニズムには、
•機械的結合
•物理的相互作用
•化学的相互作用 の3つがあります。
機械的結合
アンカー効果や投錨効果とも呼ばれ材料表面の孔や谷間に液状接着剤が入り込んでそこで固まることによって接着が成り立つという考え方です。
物理的相互作用
分子間(引)力とよばれるもので、あらゆる分子の間の引き合う力(ファンデルワールス力)をいう。二次結合力ともいい、接着剤の基本的な原理とされています。
化学的相互作用
一次結合力と言い、最も強力な接着力が期待される共有結合や水素結合をいう。
<一般的な接着剤>
- アロンアルファ:2-シアノアクリケート
- 木工用ボンド:酢酸ビニル樹脂
- セメダイン:ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル樹脂、アセトン他
- ボンド:クロロプレンゴム
歯質とレジンの接着の基本は、
①酸による歯質の脱灰
②レジン(メタクリレート樹脂)の浸透•硬化
による機械的結合です。
<エナメル質への接着>
エナメル質はほとんどが無機質からできています。最も確実な接着が期待できます。
①酸により無機質を脱灰=酸エッチング
②水洗→乾燥=微小な陥凹
③ボンディングレジンの塗布
④陥凹部への侵入したレジンの硬化=レジンタグの形成
<象牙質への接着>
象牙質は有機成分と水分に富むため、接着力が劣ります。
酸エッチング→表面に水分を多く含んだコラーゲン層が残る
※エナメル質のような陥凹ができない→濡れた表面には疎水性のレジンは浸透しにくい
そのため樹脂含浸層が重要となります。
- 象牙質内にレジンモノマーが浸透•硬化して一体となった層
- エナメル質の場合のような単に凹凸にレジンが入り込んだだけではない。
- 象牙質のコラーゲンとレジンのハイブリット化:ハイブリッドレイヤー
- 微小な機械的嵌合
樹脂含浸層の形成プロセス
酸による脱灰、水洗
象牙質表層にコラーゲン繊維が露出
乾燥させることでコラーゲンが収縮してしまう
プライマー処理でコラーゲン繊維を膨潤させ立ち上がらせる(レジンの浸透を助ける)
ボンディングレジンの浸透•硬化
ハイブリットレイヤーの形成
現在の接着システムはセルフエッチングシステムになっています。1ステップ、2ステップのものなど各メーカーからいろいろな商品が開発されています。
セルフエッチングシステムの使用に際して、
•エナメル質が広い面積を占める場合はselective etchingが有効
•象牙質には極力エッチング剤が触れないようにする
•1ステップ(オールインワン)タイプのものはselective etchingが有効
•エッチングはしっかり洗い流す
•接着させようとするエナメル質は一層研磨し新鮮面を出す
のが重要になります。
2.間接修復における接着
修復物を接着させるレジンセメントについてです。
(1)前処理を伴うセメント(エッチング•プライミング/エッチング→レジンセメント)
ex)MMA系(化学重合型)、Bis-GMA型(デュアルキュア型)
(2)前処理を必要としないセメント
ex)セルフアドヒーシブセメント
に分けられます。
(1)前処理を伴うセメント
MMA系
- スーパーボンド
- マルチボンド
Bis-GMA系(デュアルキュアー型:CRに近い)
- パナビア
- レジセム
- リンクマックス
- エステセム
- Rely X アルティメット
- Multilink Automix
(2)前処理を必要としないセメント
- G-CEM
- クリアフィルSAセメント
- G-CEM リンクエース
- ビューティセム
- Rely X Unicem 2 Automix
- Pemacem
- Multilink Speed
- Speed cem
などがあります。
<前処理について>
シリカ系セラミックス:陶材、2ケイ酸リチウム、リューサイト→シランカップリング剤処理
金属酸化物系セラミックス:アルミナ、ジルコニア→接着性モノマー(リン酸モノマーMDP等)処理
<CAD/CAMコンポジットレジンについて>
最近保険適応の範囲も広がったCAD/CAMについてです。特定保健医療材料としての定義は、「シリカ微粉末とそれを除いた無機質フィラーの2種類のフィラー合計が60%以上であり、重合開始剤として過酸化物を用いた加熱重合により製作されたレジンブロック」とされています。
充填用CRよりフィラーの数が少なく、そのため吸水しやすいという欠点があります。また未重合モノマーがほとんどないため、為害性は少ないです。しかし、重合反応で接着するレジンの接着が起こりにくいという欠点でもあります。
CAD/CAMレジンとレジンの接着のためには、シランカップリング処理とサンドブラスト処理が重要になります。
セラミック技術の発展とともに、接着技術の進歩が現在の歯科医療を支えています。セラミック治療の幅が増え、より強度の高い、さらには接着による確実な修復が可能になってきました。これからもなるべく再治療再介入のない精度の高い治療を患者さんに提供できるよう日々研鑽に励みます!