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ボツリヌストキシン製剤注入療法

こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日はボツリヌストキシン製剤についてお話しします。ボツリヌストキシン製剤よりはボトックスの方が聞き馴染みがあるかもしれませんね。


【目次】
1.ボツリヌストキシンについて
2.効果と話題性
3.作用機序
4.承認されている適応症と作用部位
5.禁忌症と注意点


1.ボツリヌストキシンについて

ボツリヌストキシン(Botulinum toxin)とは、ボツリヌス菌がつくり出すA型ボツリヌス毒素 (天然のタンパク質) を有効成分とする薬剤です。(ボトック スはアメリカのアラガン社製品名です。)様々な研究の結果、このタンパク質のごく少量を緊張している筋肉 に直接注射すると、その筋肉がゆるみ、緊張や痙攣がおさまることがわかり、医薬品として利用されるよう になりました。 ボツリヌス菌を注射するわけではないので、ボツリヌス菌に感染するといった危険性はあ りません。一方、ボトックスにはヒトに由来する成分のアルブミンを含まれており、その製造工程では加熱 処理や十分な検査がされていますので、肝炎やエイズなどの感染症にかかることはありません。しかし、現 在の医療ではまだわかっていない疾患やクロイツフェルト・ ヤコブ病(狂牛病)の感染の危険性はごくごくま れですがあることを理解して頂く事になります。ボトックス治療は1977 年に米国で初めて斜視の患者さん に使用されて以来、緊張した筋肉を和らげる治療薬として普及し、美容領域においてもFDAの承認を受け、 年間約200万件以上使用されておりますが、感染の報告は皆無です。

  • Botulus=(腸詰、ソーセージ)
  • ボツリヌス菌とは、偏性嫌気性グラム陽性桿菌で土壌中に存在
  • 芽胞は120℃30分で死滅
  • ボツリヌス毒素が引き起こす弛緩性麻痺は、神経接合部のシナプス前終末からアセチルコリン放出が阻害されることにより生じる
  • 抗原性の違いによりA~G型7種類
  • ホルモン製剤、向精神薬の作用を増強、減弱させる危険性が示唆されている
  • 2009年本国で承認

2.効果と話題性

米国では2002年にBotokの眉間のシワ治療に対する適応がFDAにより認可されました。治療件数は年々増加しており、日本でも治療件数は飛躍的に増加しています。

3.作用機序

末梢の神経筋接合部における神経終末内でのアセチルコリン放出抑制により神経筋伝達を阻害し、筋弛緩作用を示す。神経筋伝達を阻害された神経は、軸索側部からの神経枝の新生により数ヵ月後には再開通し、筋弛緩作用は消退する。

4.承認されている適応症と作用部位

  • 眼瞼下垂
  • 片側顔面痙攣
  • 痙性斜頸
  • 2歳以上の小児脳性麻痺における下肢痙縮に伴う尖足
  • 上肢痙縮・下肢痙縮

運動神経:筋緊張緩和
感覚神経:鎮痛
自律神経:腺分泌抑制、消化管収縮抑制、血管拡張
分泌腺:腺分泌抑制
平滑筋:消化管収縮抑制、膀胱緊張抑制、血管拡張

<皺治療例>
表情皺:ボツリヌストキシン製剤が第一選択
ちりめん皺:ヒアルロン酸やコラーゲンなどの注入剤、レーザーなど
たるみによる皺:基本的には手術(フェイスリフトなど)

<歯科治療(機能改善)として使用されるるボツリヌストキシン製剤>
(1)咬筋
噛む筋肉にボツリヌストキシン製剤を注射することで歯ぎしり食いしばりに改善が期待できます。

(2)口角下制筋
口角を引き下げる筋肉にボツリヌストキシン製剤を注入することで、口角が下がるのを抑えます。口角がUPすることで柔らかい表情になることが期待できます。

(3)上唇挙筋
ガミースマイルの原因となっている「過剰な上唇の挙上」を抑制するため、上唇挙上部にボツリヌストキシン製剤を注入することでガミースマイルの改善が期待できます。

(4)オトガイ筋
口の下のV字に走っているオトガイ筋に対してボツリヌストキシン製剤を注入することで梅干しアゴと言われれるオトガイの皺を改善します。

5.禁忌症と注意点

ヒト血清アルブミンを含むことより、頻回投与することで中和抗体が出現し効果の減弱が起こり得る。
<禁忌症>

  • ボツリヌス毒素や血漿製剤に過敏がある場合
  • 神経筋接合部の障害(重症筋無力症、筋萎縮性硬化症)
  • 薬剤相互作用(アミノグリコシド系/リンコマイシン系抗菌薬、Caチャネル阻害薬)
  • 妊娠や授乳中(妊娠予定がある方)
  • 15歳未満
  • 抗凝固薬剤使用中
  • 年間投与量 ≦200IU
  • 宗教的な制約など

<取り扱い上の注意点>

  • 溶解前は冷凍、溶解後は冷蔵
  • 溶解後は2週間以上経過した場合、効力は失活しているという認識が妥当
  • 溶解後に再凍結させた場合も効力の持続は期待できないため破棄する
  • 初回施術による効果持続期間は約3ヶ月、その後回数を重ねることで持続期間が延長する傾向にある

<術後の注意点>

  • 当日の刺入部のマッサージを控える(拡散防止のため)
  • 1.5時間~2時間はできるだけその筋肉を動かさない
  • 部位をむやみに温めない
  • 当日の化粧をなるべく控える
  • 1~2週間後にフォローとして来院してもらう
  • 女性は投与後2回の月経まで、男性は3ヶ月避妊する

当院では、食いしばりの強い方に対して、咬筋へのボツリヌストキシン製剤注入療法を行っています。まずは咬合関係の精査やマウスピースなどを提案しています。マウスピースがすぐ壊れてしまう、気持ち悪くて使用できないなどの場合、ボツリヌストキシン製剤の提案をさせていただきます。興味のある方は当院スタッフまでお声掛けください。