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発育・成長
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。昨日は管理栄養士についてお話ししました。今日は引き続き発育・成長についてお話しします。
スキャモンの発育曲線
ヒトは生まれてから成人するまでの過程で、身長や臓器が大きく成長していきますが、その成長具合をグラフで示したものをスキャモンの発育曲線と言います。
<スキャモンの成長曲線>
- 一般型
- 神経型
- 生殖型
- リンパ型
の4つに分類して表現しています。
①一般型
一般型は、身長や体重、筋肉、骨格などの成長を示したものです。ヒトの身長や体重の伸びが大きくなるのは、生まれてすぐの時期と12歳頃の思春期と呼ばれる時期です。したがって一般型の発育曲線は、前半と後半に急成長のピークが2ヵ所登場することになります。
②神経型
神経型は、脳や脊髄、視覚器などの神経系や感覚器系の成長を示したものです。神経系や感覚器系というのは、生まれてから早い段階で、大人と変わらないレベルにまで成長を遂げます。したがって、神経系の発育曲線は、出生後から一気に増加し、成長期には100%の状態にまで達します。
③生殖型
生殖型は、男性や女性の生殖器、乳房、咽頭などの成長を示したものです。いわゆる第2次性徴に関わる臓器なのですが、男の子が男性らしく、女の子が女性らしく変化する頃:思春期です。声変わりなどもこの時期に起こります。したがって、生殖型の発育曲線は、出生後しばらくは低空飛行を続けますが、思春期になると急に上昇していきます。
④リンパ型
リンパ型は、胸腺などのリンパ組織の成長を示したものです。分かりやすく言い換えると、体を守るための免疫系の成長のことです。小さい頃は免疫力が弱いため、いろんな病気をしがちです。しかし、年齢を重ねるごとに免疫力は高まっていき、長い人生のなかで、免疫力がピークに達する時期(最も体が強くて回復力のある時期)は、思春期頃となります。このときの免疫力は、成人期よりも遥かに高い状態です。したがって、リンパ型の発育曲線は思春期に最も高くなり、そこから徐々に下がっていく形となります。
身体の成長
身体の各組織はそれぞれ異なったスピードで成長します。 具体的には、脳に近いところから先に成長していきます。脳や神経が先行して成長し、その後筋肉や骨格が成長していきます。 先ほどもお話ししましたが、脳や神経は幼年期に急激に成長し、6、7歳までにその成長のほとんどを完了すると言われています。一方、筋肉、骨格など全身組織は、幼年期のゆっくりした成長と思春期の急激な成長(成長ピーク)が特徴とされています。 中学生にころは一年の間に10cm近く身長が伸びたりします。成長の一般的なパターンは大きくは変わりませんが、成長ピークの時期が変動することにより、個人差が大きく出ます。成長ピークの指標として代表的なものに、性的な成熟と思春期成長による身長の伸びが指標としてあげられます。
性的な成熟は、女子では初潮の発現などがありますが、男子では相応する指標がありません。そのため身長の伸びを指標としています。成長の量やピークの時期や継続期間は、大部分が遺伝的にコントロールされています。先天的にある程度決まっているため、後天的にコントロールできる部分はわずかしかないと考えられています。
口腔内の成長
顔の成長は、
5才までに40~45%
10才ごろまでに80%
20才ごろまでに成長が完了します。
最初に顔の幅が成長し、次に顔の長さと深さが成長していきます。 上下の顎骨は同じ口腔内の骨ですが、上顎骨は下顎骨より脳に近い骨であるため、下顎骨より先に成長するという特徴があります。
<上顎骨>
上顎骨はいくつかの骨が縫合により組み合わさって形成されています。この縫合部に骨ができることにより奥行と幅の成長が起こります。上顎骨は一般的に男女とも小学校低~中学年の時期に成長ピークを迎えます。
<下顎骨>
下顎骨は身長が大きく伸びる時=思春期成長期に大きくなる手足の骨と同じ種類の骨です。顔面の骨の中で最も大きな骨です。骨全体が大きくなることで奥行と幅の成長が起こります。小学校高学年から中学校には下顎の成長ピークが始まります。思春期が終わるぐらいまでは下顎骨の成長が続くと言われています。思春期の発現が遅い男性の方が女性に比べ下顎骨の成長期間が長くなる傾向にあります。
矯正学での顎骨の成長の指標として、セファロ分析があります。分析に用いる点は多くありますがその中でも、
1.セラ(S):蝶形骨トルコ鞍(脳下垂体が存在)の中心点。これは作図的に求められる点
2 ナジオン(N):鼻骨前頭縫合の最前点
3.A点(A):上顎歯槽基底の前方限界。前鼻棘(びきょく)からプロスチオン(Pr)に至る彎曲の最深点。
4.B点(B):下顎歯槽基底の前方限界。インフラデンターからポゴニオン(Pog)までの彎曲の最深点。
は成長過程を分析する上で有効です。
0~5歳 | 5〜10歳 | 10〜20歳 | |
N | 全成長過程の85%が完成する | 全成長過程の96%まで完成する | 全成長過程の残りが完成する |
A | 全成長過程の45%が完成する | 全成長過程の65%まで完成する | 全成長過程の残りが完成する |
B | 全成長過程の40%が完成する | 全成長過程の65%まで完成する | 全成長過程の残りが完成する |
成長に合わせて顎矯正を行うことで…
顎骨の成長の余地がまだ残されているタイミングで、成長を助けるような(拡大するような)整形力(orthopedic force)を加えることで、顎骨の成長をコントロールすることが可能です。骨が大きく幅があれば歯を並べるスペースが作りやすいです。骨が小さいと、歯が並び切らないため抜歯を行いスペースを作る可能性があります。
具体的には、
上顎過成長(出っ歯);上顎骨の成長抑制を図る治療
上顎劣成長(受け口):上顎骨の成長促進を図る治療
下顎過成長(受け口):下顎骨の成長抑制を図る治療
下顎劣成長(出っ歯):下顎骨の成長促進を図る治療 が組み込まれます。
上下顎の過成長(+)、劣成長(ー)を診断し、症状に合わせた装置を選択します。
顎骨の成長ピークは、交換期に始まります。前歯の生え変わりが始まったら一度精査をお勧めします。機能的な反対咬合などで上顎の成長が十分に見込めないと、将来的に骨格的な反対咬合になるリスクが高いです。また交換期は虫歯のリスクも高いため、定期的なチェックをお勧めします。
成人するまでの過程で
・9~12歳頃:ゴールデンエイジ
・8〜9歳頃:プレゴールデンエイジ
・13歳頃~:ポストゴールデンエイジ といいます。
様々な成長過程を経て、20歳前後でバランスのとれた状態=成人となりますがゴールデンエイジアンバこそが成長・発育、運動技能を獲得する千載一遇のチャンスです。ゴールデンエイジが発育発達のカギといわれます。
<スポーツにおける成長過程>
成長に合わせた栄養素
①一般型
「牛乳をたくさん飲む」、「タンパク質をしっかり摂る」、「魚をたくさん食べる」全て重要です。もっとも重要なのはバランスの取れた食事です。骨の成長にはカルシウムを摂ることが重要だというのはよく知られています。しかし、骨をつくるためにはカルシウムだけではなく、骨の材料となるタンパク質、さらにカルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨の形成を促すビタミンKも同時に必要となります。
バランスの取れた食事、適度な運動、睡眠すべてバランスよく行うようにしましょう。成長期に欠かせない、体の材料となる「タンパク質」と「カルシウム」、食事からの摂取では不足しがちな「鉄」を配合したジュニアプロテインなども現在販売されています。
②神経型
脳を健やかに発達させるには、しっかりと脳に栄養を摂取することが大切です。脳に必要な栄養素として糖質やたんぱく質、ビタミン、鉄などがあげられますが、最も重要な栄養素は、脳の60%を構成する脂質です。そして、その脂質の約20%を占めるのがDHAと呼ばれる脳の発達に欠かせない栄養素です。目にもDHAが多く存在しており、目の発達にも重要な成分であることが知られています。
③生殖型
思春期は身体的発達だけでなく精神的な発達も顕著であるが、過敏で不安定な時期でもあります。クラブ活動や塾などで帰宅時間が遅くなり家族との食事の機会が少なくなります。そのため、食事内容の単純化、偏食、朝食欠食、夜食習慣など種々の問題があげられます。また,急速な成長や女子の月経、過度の運動により生じる貧血、不規則な生活や誤った食情報による食生活の偏りや乱れから生じ
る肥満、やせ、そのほかの栄養障害などこの時期特有な食に関する問題が多いです。
思春期は第二次発育急進期といい、身長や体重など身体の伸びが著しい時期です。バランスの取れた食事をしっかりとるよう心がけましょう!
④リンパ型
免疫機能をサポートする栄養素として代表的なものは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンEと、亜鉛の5つです。特にビタミンA、D、C、Eは、肉・ポテト・パン・シリアルなどが中心の食生活では不足しがちな栄養素です。また野菜やフルーツ、魚介を食べる習慣がない人は、これらの栄養素が不足しがちです。亜鉛とビタミン類が不足すると、免疫機能が正常に反応しなくなり、異物が体内に侵入してきても免疫細胞が機能せず、健康を維持できなくなってしまいます。
ライフステージに合わせて食事についても何かご質問あればご気軽にご相談ください!