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根幹治療について⑥意図的再植
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は根管治療:外科的歯内療法②についてお話しします。今日はIntentional Replantation意図的再植についてお話しします。
【目次】
1.Intentional Replantation意図的再植とは?
2.Intentional Replantation意図的再植の術式
3.自家歯牙移植
1.Intentional Replantation意図的再植とは?
意図的再植とは、歯を一度抜いて、口腔外で歯根に対する処置を行った後に、抜歯窩に戻す方法です。
昨日の歯根端切除が難しい場合に適応されることが多い術式です。位置的にアクセスが困難なケースや、解剖学的に歯根端切除が不可能な場合に行われます。
<適応症>
①アクセスが困難
舌側傾斜している歯牙や、上顎口蓋根などは歯根端切除が困難もしくは不可能な場所になります。頬側からのアクセスのため頬側歯槽骨の削除量が多くなってしまったり、頬側根が存在するため口蓋根までのアクセスが不可能な場合があります。
②解剖学的構造
オトガイ孔や神経が近接している場合、歯根端切除が不可能になります。このような場合も意図的再植となります。
どちらにしても、その歯が抜歯に適している歯かどうかの判断が重要となります。
また抜歯に適している歯であっても、無事に抜けてくれる保証はなく、歯牙破折などは実際に抜歯した後にその歯を観察しないとわかりません。意図的再植は歯を保存する最終手段となりますが、適応なるかどうかの判断が非常に重要となります。
論文などで示されている高い成功率(80~90%)は、適応かどうかの診断を厳しい基準で行っているのも理由の一つです。
2.Intentional Replantation意図的再植の術式
1. Extraction抜歯
2. Resection切断
3. Retroprep逆根管形成
4. Retro-filliing逆根管充填
5. Replantation再植
6. Healing治癒
<メリット>
・神経や隣在歯を損傷するリスクが少ない
・口腔外で処置を行うので、視野が明瞭
・器具操作がしやすい
・防湿が容易
<デメリット>
・単純抜歯が困難/不可能な場合、処置を完結できない可能性がある
・抜歯操作時に歯が破折する危険性がある
・再植後に歯が骨癒着や歯根吸収を生じる可能性がある
歯根膜は乾燥に弱いです。歯根膜にダメージをいかに与えないかが予後に大きく左右します。原則20分以内を目標に行いますが、2時間ほど口腔外で作業しても問題なかったというお話も聞いたことがあります。
3.自家歯牙移植
自分の歯を、自分の口腔内の別の場所に移植する手術のことを言います。親知らずなどを用いて必要な箇所に移植するという方法になります。非常に高度な治療を想像される方も多いですが、インプラントよりも大変予後が良く条件さえ合えばとても成功率の高い治療法の一つです。自分の歯になりますのでインプラントより拒絶反応が起こりにくく、定着後歯根膜の機能も期待できます。
CTと3Dプリンターの技術が向上したため、歯牙レプリカを作成し自家歯牙移植を行うことで、成功率がさらに高まりました。
<メリット>
・飲食時の違和感が少なく、自分の歯のように食事を楽しめる
・ 歯根膜がクッションの役割も果たすため、噛む時の力も抑えられる
・周囲の歯を削ることがなく、他の歯の寿命も維持できる
・移植後に矯正治療をすることも可能(インプラントの場合は不可能)
・インプラントの埋入時期を遅らせることができる
インプラントも優れた治療法になりますが、インプラント埋入後のリカバリーはとても大変になります。自家歯牙移植後にインプラント埋入となれば時期を10年以上遅らせることも可能です。僕はこれがメリットとしては一番大きいかと思います。
<デメリット>
・健康な親知らずなど、提供歯(ドナー歯)が必要
・ 移植する場所に健康な幅のある骨が必要
・インプラントよりも高い技術を要する
・抜歯する歯の部位、移植する部位の両方に外科手術が必要となる
・ご高齢の場合、自家歯牙移植の成功率が下がることがある
※移植後の歯牙は神経組織の腐敗の波及を防ぐため2週間以内に根管治療が必要となります。
今回は外科的歯内療法・意図的再植と自家歯牙移植についてお話ししました。どちらも自分の歯をなるべく残すための方法になります。全ての歯科医院で行なっているわけではございません。また全ての患者さんに行うことができる方法でもございません。しかし、条件さえそろえばかなり有効な方法です。歯根膜がいかに健康かが成功の鍵になります。他院で残すのが困難と言われた方、諦めずに一度ご相談ください。