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ラバーダムについて
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は「ラバーダム」について復習します。今までも根管治療の項目で説明しましたので参考にしてください。
【目次】
1.ラバーダムとは?
2.ラバーダムのメリット
3.ラバーダムのデメリット
4.実際の治療例
1.ラバーダムとは?
ラバーダムとは上の図のように、治療中に唾液や細菌が入らないようにするために治療する歯だけをゴムのシートから出し、唾液や血液の侵入を防ぐことを目的としています。これを行うだけで、治療の成功率が高くなり、回数や時間の短縮にもつながります。日本でのラバーダムの使用率は10%以下と言われています。これが日本の根管治療の成功率の低さの原因です。
では、なぜ日本ではラバーダムが普及していないのか?
大きな理由としては、
①手間とコストがかかること
②ラバーダムをしなくても治療ができる
があると思います。ラバーダムを装着するのにはいくつかのステップがあり、手間とコストがかかってしまいます。またその治療行為に対しの診療報酬は0点です。医院側のサービスになってしまっているのが普及しない一番の理由かと思います。また、ラバーダムを使用せずとも治療を行うことができるのと臨床上すぐに問題が起こるわけではないことも普及しない理由として挙げられます。
当院ではメリットがある場合、全ての治療においてラバーダムを装着しています。
①根管治療
ラバーダム防湿は、特に根管治療の際に有効となります。根管治療が失敗してしまう原因が、根管内の細菌感染にあるからです。ラバーダム防湿をすることによって、唾液と一緒に細菌が根管に入り込むのを防ぎ根管治療の成功率を上げることができるのです。
②詰め物の治療
CRと呼ばれる歯の詰め物の治療時にもとても有効です。CR接着操作での治療になります唾液が入ると詰め物が強固に接着しません。また口腔内の湿度はとても高くそのような環境でも接着力は期待できません。接着力が低いと、詰め物が脱離しやすかったり、接着しない隙間から細菌が中に入ってしまい、虫歯が再発しやすくなってしまいます。ラバーダム防湿をすることによって唾液を遮断し、確実な詰め物の接着が可能となります。
③詰め物や被せ物の除去
詰め物や被せ物の除去の時にも有効です。ラバーダム防湿をした状態で除去すれば削りかすや外れた物が喉の奥の方に行きません。外れた物が喉の奥の方に行ってしまうと、飲み込んでしまったり、最悪は肺に入ってしまうこともあります(誤嚥誤飲)。また削る時のお水が喉にたまらなくなるので、治療中の苦しさも軽減できます。実際、治療後の方に聞いても、装着した方が楽だったという方も多くいらっしゃいます。
2.ラバーダムのメリット
- 唾液の侵入による術野の湿潤・感染防止・乾燥
- 歯肉溝滲出液・出血の侵入による術野の湿潤・感染防止・乾燥
- 切削片・除去金属などの誤飲・誤嚥防止
- 機械・器具等の誤飲・誤嚥防止
- 薬液の漏出による口腔粘膜の障害防止
- 切削器具による口腔軟組織の障害防止
- 術野の明視と操作性の容易化・術式の合理化
- 嘔吐反射の抑制
- 開口の補助
- 歯肉の排除
3.ラバーダムのデメリット
- 口呼吸しにくくなる、苦しい場合がある
- 軽いパニック
- ラテックスアレルギー
- 歯軸方向がわかりにくくなる
- 歯の乾燥による色調の変化
- 装着に時間がかかる
- 装置による術後の歯茎の痛み
そのほかに、先ほど述べたようにラバーダムの保険算定ができないのが現状です。そのため実費(材料代)だけお支払いいただいています。ラバーダムを使うことのメリットデメリットを事前に説明し相談後、ご希望の方に使わせていただいています。
3.実際の治療例
①虫歯の除去
除去前
ラバーダムを装着し劣化したインレーを除去していきます。
除去直後
隙間の空いた詰め物の下に汚れの侵入を認め、セメントも唾液によって劣化しています。
IDS後
虫歯を取り切り、CRにてIDS:Immediate Dentin Sealを行った直後です。
Immediate Dentin Seal:IDSとは、露出した象牙質の汚染保護と接着の観点から、即時にCRでコーティングする方法です。IDSは形成後、象牙細管を即時に封鎖することで、最良の状態で象牙質の接着を獲得することができます。ラバーダム下での接着強度が上がり、さらに歯質の汚染防止にもつながります。また修復物をセットする際の接着力向上の効果も期待できます。
②CR充填
ラバーダム装着直後
処置する2本を同時に防湿しています。
虫歯除去後
検知液を使い、虫歯を徹底的に取り除きます。
CR充填後
CR充填で形態付与を行います
ラバーダムを外し咬合関係の確認を行います。
今回はラバーダム防湿についてお話ししました。ラバーダムを行うことが有効という研究は多く見られますが、やらない方がいいという論文は一つもありません。やることによるリスクはほとんどありません。当院は予後のいい、再介入の少ない治療のためラバーダム防湿を可能な限り行なっています。全ては患者さんのためです。今後、ラバーダム装着の術式についてもお話しします。