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加齢に伴う変化②

こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は「「加齢に伴う体のさまざまな変化②」顔面領域に焦点を当ててお話しします。



1.歯牙喪失による顎骨の変化

抜歯後(歯牙喪失後)には、3次元的な歯槽骨の形態変化が生じます。抜歯後3ヶ月で約30%、1年後で50%も骨幅が減少したという研究結果もあります。

密度の高い層板骨(lamellar bone)から成る皮質骨の内側に海綿骨があり、歯根膜と接していた部分では束状骨(bundle bone)がシャーピー線維を陥入させ歯根側でのセメント質と同様の機能を果たしています。しかし、役目を終えた束状骨は抜歯後2週間で徐々に網状骨(woven bone)へと置換されます。イヌの抜歯後の組織像の観察では,舌側よりも頬側のほうが骨が薄く,頬側ではほとんどが束状骨であるため,大きく吸収すると報告してます(Bundle bone theory)この大きな骨の形態変化は、歯根そのものの喪失と歯根膜の機能喪失によるものと解釈ができます。抜歯窩を掻爬せず歯根膜を意図的に残した場合でも、骨形態の温存には役立たなかったことや、インプラントを抜歯後即時に埋入しても骨吸収は抑制できないこと動物実験で示されています。これは、歯根膜をもたないインプラントに束状骨を維持できる血流の確保は期待できないためです。Ridge Preservation Techniqueについては後日また詳しくお話しします。

下顎骨の変化

国立 歯医者 加齢変化

下顎骨は歯牙喪失後、外部形態が大きく変化します。特
に歯槽部での変化が著しく,骨吸収により歯槽部が消失
していきます。最も吸収した場合、前歯部ではオ
トガイ棘、小臼歯部ではオトガイ孔、大臼歯部では顎舌
骨筋線の高さまで退縮してしまいます。

この吸収は、前歯部においては唇側上方から後下方に向かって起こり、舌側における吸収は唇側に比べ て少ないです。臼歯部においては上方から水平的な吸収が起こります。 しかし前歯部唇側下方のオ トガイ隆起部では逆に骨の添加が認められます。 これらの結果、無歯顎の前歯部歯槽頂は舌側に移動するため前歯部上方は舌側に向かい尖り、また下顎底部は前方に向かい突出してきます。

上顎骨の変化

歯が喪失すると下顎骨と同様に歯が植立していた部分である歯槽突起の吸収が顕著にみられます。歯槽突起の吸収が進むと口蓋突起との高さの差がほとんどなくなり後方では翼状突起と接する部分が若干高 く残るのみでその他の部分は翼状突起 の高さよりも低くなってしまいます。歯槽突起の吸収は全体的に頬側から起こるため無歯顎になると歯槽頂が口蓋側に移動することにより馬蹄形は有歯顎に比べて狭くなります。上顎骨の方が下顎骨より吸収量も多いため、無歯顎の場合Ⅲ級傾向になっていきます。上下総義歯を作成する場合、前歯部傾斜に注意が必要です。

2.歯の加齢変化

歯と歯周組織は加齢により、構造と形が変化し歯数も減少してしまいます。

①エナメル質の変化

・石灰化が進行し、透過性が低下すると色調が暗くなる
・硬く、脆くなり、亀裂(クラック)を生じやすくなる
→亀裂に色素沈着を生じることで審美障害も生じてしまう
・咬耗や摩耗により形態が変化する
→咬合高径の低下や、咀嚼能力の低下、隣接面への食片圧入が生じやすくなる

②象牙質の変化

(1)第二象牙質 の形成:歯根完成後の生理的加齢変化の一つ
・原生象牙質の形成を終えた象牙芽細胞は、基質を形成し続け、歯髄腔が狭窄する
→髄角が消失、露髄の危険が小さくなる
・大臼歯では髄室蓋や髄室底に、多量の象牙質が形成される
→髄室の開拡が困難になる

(2)第三象牙質(修復象牙質、補綴象牙質) :刺激による病的な加齢変化の一つ
・虫歯や咬耗により露出した象牙質の歯髄腔側にできる
→歯髄を保護はするが、根管治療の際に器具のアクセスが困難になる

(3)象牙質の硬化(象牙細管の閉塞)
・象牙細管が石灰化・閉塞し、固くなる
→光の屈折率が変化し、象牙質の透明度が増す
→象牙質の知覚を鈍麻させるが、細管の閉塞は根管治療を困難にする。

※一般的に疾患や症状がなければ象牙質の加齢変化は問題ないが、根管治療の難易度を上げてしまいます

③歯髄の変化

・第二象牙質により、根尖孔が細くなり、血流が減少する
→低酸素状態になり、アルカリフォスファターゼ活性が上昇し、石灰化が亢進する
(石灰変性 や象牙質粒〈歯髄結石〉を生じる)
→歯髄神経の変性により、疼痛閾値は上昇するので、削除時の疼痛は少なくなる
→歯髄の活性が低下し、歯髄切断や直接覆髄が困難となる

3.口腔ケア

高齢になるにつれて口腔周囲の働きは低下します。若い頃のように活動し、よく笑い、しっかりと噛んで食べることができれば、顔の筋肉もよく動くので、意識して動かす必要はありません。しかし、高齢の方は加齢や疾患による障害、麻痺などで身体が動かしづらくなり、人との交流の機会が減り、笑うことや会話をすることが少なくなってしまいます。また、虫歯や歯周病により歯を失い柔らかいものばかり好んで食べるようになると、口腔周囲の筋肉はますます動きにくくなってしまいます。

口腔周囲筋のストレッチをすることは、筋肉の動きの改善につながります。つまり、口腔機能の改善や誤嚥性肺炎の予防にもつながります。口腔周囲筋の体操と唾液腺マッサージを行い加齢変化に対応しましょう。

■口腔周囲筋の体操
口を開けたり閉じたり、舌を出したり引いたり、頬をふくらませたりすぼめたりして、口腔周囲の筋肉を動かします。そうすることで、唾液の分泌を促し、食べる機能の衰えを防ぐことができます。

■唾液腺のマッサージ
お口の中の唾液腺を刺激することで、唾液を出やすくします。耳の下や顎の下、頬を、ゆすったりもんだりしましょう。


加齢は誰にでも起こることです。日々にストレッチやトレーニングで予防しましょう。また高齢での治療は通院も困難になります。早めに口腔内環境を整え、バランスの取れた食事をし全身に健康管理に繋げましょう。明日はRidge Preservation Techniqueについてお話しします。