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他科との連携について
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。
歯科医療を行う上で、全身疾患の方や医科に通院中の方も多くいらっしゃいます。また、他の歯科医院からの紹介もあります。地域住民のため、通院される患者さんのために他科との連携はとても重要になります。病院歯科(歯科口腔外科)や、内科、耳鼻科、皮膚科などと連携を取りながら診療を行っています。今日は、その中でも耳鼻科との連携についてお話しします。
歯科口腔領域と耳鼻咽喉科は、共に頭頸部顔面領域の診察を行うため、相互に連絡を取り合うことがあります。歯が原因で上顎洞炎を発症したり、その逆で、上顎洞炎が原因で歯が痛くなったり…
この上顎洞は、インプラントのオペでも重要な解剖学的部位になります。インプラントの説明の時にもまたお話しします。
上顎洞炎はみなさん聞いたことがありますか?
鼻の周りには、鼻腔と連絡しているたくさんの空洞があります。これを、副鼻腔と呼び、上顎洞(鼻の両脇)・前頭洞(おでこの中)・篩骨洞・蝶形骨洞に分けられます。洞の奥の方は脳や眼に隣接しています。洞内は小さな毛(線毛)の生えた粘膜で被われ、この線毛の運動により、分泌物や異物が鼻腔へ排泄されます。この上顎洞に起こる炎症を上顎洞炎といいます。
これらの副鼻腔に慢性的に炎症があるものを、慢性副鼻腔炎と言います。いわゆる蓄膿症(ちくのう症)です。なぜ蓄膿症と言うのかというと、炎症が慢性化すると粘膜が厚くなり鼻腔への連絡通路が塞がってしまい、洞内の分泌物や膿が副鼻腔の中で溜まってしまうからです。
症状は、臭いがしない・鼻がつまる・鼻水が咽喉(のど)の方に流れる、黄色い粘り気のある鼻水がでるなどで、眼や頭や頬が重いとか痛い、歯が痛いなどの症状を訴える場合もあります。さらに、炎症が中耳にまで波及すると中耳炎を起こしたり、喉へ流れる鼻汁によって慢性咽頭炎や慢性気管支炎になることもあります。眼神経が圧迫されて、失明をしてしまうこともある怖い病気です。
この上顎洞炎には原因により①歯性上顎洞炎と②鼻性上顎洞炎に分類することが出来ます。われわれ歯科医師は歯性上顎洞炎の治療を担当します。鼻性は耳鼻咽喉科に依頼します。
「上顎洞炎に占める歯性上顎洞炎の割合は、かつては10%とされていたが、実際は40%とされる」「上顎洞炎に対し、内視鏡下鼻内副鼻腔手術の治癒率は85%であり、改善しない症例はレントゲン上でわからない根尖性歯周炎が原因である」など、歯科領域と耳鼻科領域が連携を取る事が必要です。難治性の根尖性歯周炎の場合、歯科用CT撮影で原因歯、原因根を正確に診断し、治療を進めていきます。
上顎洞炎の症状としては、
・上の奥歯が痛む
・目の下が重苦しい
・歩く振動で目と鼻が痛い、響く
・黄色の鼻水が慢性的にでる(左右どちらか片方からだけのことが多いです。)
・頭痛
・目の奥が痛い
などです。
上顎の奥歯(臼歯部)の根の先は上顎洞とかなり近接もしくは自然交通しているケースもあります。歯性の場合、虫歯が深く進行し神経が腐敗し、根尖(根の先端)から歯の外部、この場合上顎洞内に波及することで上顎洞炎が発症します。そのため上顎臼歯部の根管治療をされている方は、注意深く経過観察をする必要があります。
治療方法としては、再根管治療を行い原因物質の除去を行うことです。以前にもお話ししましたが根尖外にまで波及した症状は治癒に時間がかかってしまいます。当院ではラバーダムを装着し、撤退した感染管理を行なった上で精密再根管治療を行なっています。心当たりのある方は一度当院スタッフまで相談してください。
また、逆に慢性鼻炎から上顎洞炎を発症し歯に症状が出ることがあります。この場合は、耳鼻科での治療が必要になります。誤った診断で歯の根管治療を開始してしまわないよう、精密検査を行い、歯が原因なのか、鼻が原因なのかの鑑別診断を行い治療方針を立案します。
このように歯科と耳鼻科の関わりは深く、とても重要な連携になります。歯科でも他科との連携やチーム医療が主流になってきていますが、当院では患者さんを一番に考え治療が行えるよう最善の環境を整えていますので、安心して通院していただければと思います。
花粉症で鼻が詰まり、一時的に口腔内の症状も併発することがございますので、何か少しでも気になることや不安なことがあれば、早めに当院での検査をおすすめいたします。
歯科での偶発症
上顎洞について上記でご説明したとおり、上顎の奥歯の歯根は上顎洞と近接、もしくは自然交通しています。そのため、上顎の奥歯の抜歯の際にまれに上顎洞に穴が空くこと(穿孔)があります。穴が小さい場合には、自然に治りますが、穴が大きい場合には、飲んだ水が鼻から漏れたり、一時的に副鼻腔炎になることがあります。副鼻腔炎の症状が強い場合には、口腔外科や耳鼻科を紹介をして診てもらうことになります。
さらに、上顎の奥歯の抜歯の際に、根が上顎洞の中に入り込んでしまうこと(迷入)があります。その場合には、入り込んでしまった根を口腔外科や耳鼻科で取ってもらう必要があります。同じ理由で、インプラントの手術の際に、誤ってインプラントが上顎洞の中に入り込んでしまった場合にも同様な処置を行う必要があります。
その他疾患
(1)口呼吸
口呼吸で口の中が乾燥してしまうと細菌増殖につながるだけでなく、自浄作用が働かず、虫歯や歯周病の原因、悪化につながり、さらに誤嚥性肺炎の原因にもなります。また、口呼吸は歯並びにも影響します。口呼吸の原因が、鼻詰まりや慢性副鼻腔炎、扁桃腺炎、アデノイド肥大などの場合には、早めに耳鼻科で治療を受けましょう。
(2)睡眠時無呼吸症候群
いびきの症状が進み、呼吸が低下したり、呼吸が止まる病気を睡眠時無呼吸症候群と言います。日本では習慣的にいびきをかく人は2000万人以上、睡眠時無呼吸症候群の患者数は300万人以上と言われています。あごや鼻、顔の形、歯並び、肥満、喉の形態、鼻の病気を原因として発症します。
無呼吸によって血中の酸素が不足してしまうため、睡眠時にしっかりと体を休ませることができなくなり、日常生活に支障を来すことも少なくありません。
この状態が続くと良質な睡眠が取れず日中に強い眠気を起こして、判断力や集中力の低下が起こり、重大な事故や労働災害などにつながる可能性があり、近年、社会的にも注目を浴びています。
また、睡眠中に無呼吸、低呼吸が起こると、低酸素血症や高炭酸ガス血症となり、心臓、肺、循環器系などに負担がかかり、高血圧、心臓疾患、脳血管障害などを引き起こし、突然死の原因になるとも言われています。また、高脂血症、糖尿病、自律神経の異常やうつ病等の精神疾患にも関連すると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群の検査や治療が可能な診療科は、内科、呼吸器内科、循環器科、耳鼻咽喉科、睡眠外来、歯科・口腔外科、精神科など、多岐に渡っています。歯科でのマウスピース型の治療方法は医科での診断書があると保険適応になります。
耳鼻科以外にも、麻酔や抜歯の可否などの医療連携をとったり、服薬中のお薬の情報を共有したりと、いろんな分野で医療連携を行っています。すべては患者さんんの健康のためです。問診票での多くの質問や確認事項など、ご迷惑をおかけしますがご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。