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誤嚥性肺炎について②

こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。昨日の「誤嚥性肺炎」の続き・日常生活でのアドバイスをお話しします。


【目次】
1.摂食・嚥下
2.摂食・嚥下障害の原因
3.摂食・嚥下障害の診断
4.日常生活でのアドバイス


1.摂食・嚥下

摂食・嚥下機能に障害が生じた場合に起こる問題は、肺炎・窒息・低栄養・脱水など生命の危険に直結する、とても深刻なものばかりです。また、食べることの障害は、医学的リスクだけでなく、食べる楽しみを失うという生活の質(QOL)の観点からも重要な問題になります。患者さんに合わせた食事や栄養摂取のスタイルを確立することが、摂食・嚥下機能のリハビリの一番の目標になります。

<摂食・嚥下のステージ>

①先行期

国立 歯医者 摂食・嚥下

視覚、嗅覚、触覚により食べ物を認知し、口に運ぶまでの時期になります。食べ物の温度や形状、食べにくさなどを判断し、口に運ぶ量などを計算します。

②口腔準備期

国立 歯医者 摂食・嚥下

食べ物を口腔内に取り込み、咀嚼をして食塊を形成する時期。顎、舌、頬、歯牙を用いて唾液と混ぜ合わせ、まとまりがあって柔らかく咽頭を通過しやすい塊を形成します。

③口腔送り込み期

国立 歯医者 摂食・嚥下

舌を用いて食塊を咽頭に送り込む時期。口蓋に舌を押し当てしっかりと接触させ口腔内の圧力を高くします。頬や口唇も同様に機能します。

④咽頭期

国立 歯医者 摂食・嚥下

食塊を嚥下反応により咽頭から食道入り口に送る時期。軟口蓋が挙上し鼻腔との交通を遮断し、舌骨と喉頭が前上方に挙上し食道入口部が開大し喉頭蓋谷が下降します。声門は閉鎖し気道に流れ込むのを防止します。

⑤食道期

国立 歯医者 摂食・嚥下

蠕動運動と重力により食塊を食道から胃に運ぶ時期。食道入り口に筋収縮により逆流しないよう封鎖します。

2.摂食・嚥下障害の原因

摂食・嚥下障害の原因は、①器質的(解剖学的)障害と②機能的(生理学的)障害の2つに大きく分けられます。また、加齢に伴う機能低下も影響します。

  1. 器質的(解剖学的)障害
    器質的障害とは、口腔、咽頭食道などの解剖学的構造に異常がある場合です。食塊の通過するところに障害物があるような状態をいいます。舌がんや咽頭がんなどの口腔・咽頭の腫瘍による場合や術後の障害が原因となる場合が多いです。舌がんでは舌切除による舌の運動障害を生じ、食塊を口腔内で処理できなくなり、咽頭へ送り込めないなど口腔期の障害が起こります。また、咽頭がんでは舌根部や咽頭後壁切除により咽頭内圧の低下を生じ、嚥下しても食塊が咽頭に残留してしまうなど咽頭期の障害が起こりやすくなります。どちらも切除範囲が広いほど障害が重度になる傾向があります。
  2. 機能的(生理学的)障害
    機能的障害とは、口腔や咽頭の解剖学的構造は正常でも、それら器官の運動に障害があり、食塊の通通過するところの動きが遅くなってしまうような状態の事です。原因としては、脳血管障害や筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病などの神経変性疾患のほか、多発性硬化症、脳炎、脳腫瘍、脳性麻痺、外傷性脳損傷、筋ジストロフィー、重症筋無力症、多発性筋炎などが挙げられます。
  3. 加齢の影響
    高齢者においては、加齢に伴い、摂食・嚥下機能面の様々な機能低下を生じてきます。歯数の減少により食塊形成が不利となります。また嚥下反射がゆっくり始まるようになります。さらに咳の反射が低下しあまりむせなくなってしまいます。小さな脳梗塞は加齢とともに増加し、嚥下機能に影響を及ぼします。また、薬剤の影響としては、抗コリン薬や抗ヒスタミン薬の服用により、唾液分泌は抑制されます。抗てんかん薬や抗精神薬は嚥下反射を抑制します。

3.摂食・嚥下障害の診断

  1. スクリーニング検査
    ・反復唾液嚥下テストは、口腔内を湿らせた後に、唾液を嚥下してもらいます。30秒間で可能な空嚥下の回数を評価し、30秒間で2回以下を異常とします。

    ・改訂水飲みテストは、冷水3mlを口腔に注ぎ嚥下してもらい、その後、反復して嚥下を2回行うように指示します。評価は、嚥下可能かどうか、むせるかどうか、呼吸状態に変化があるかどうかをチェックし、判定します。
  2. ビデオ嚥下造影(videofluoroscopic examination of swallowing:VF)
    X線による透視下で、造影剤を混ぜた、コーヒー、とろみの付いたコーヒー、ゼリー、または実際のお食事の一部を飲み込んでいただきます。検査時、実際に少量ながら食物を食べるので、それに伴う誤嚥の危険性があります。造影中は誤嚥にすぐ対応できるよう常に吸引ができる準備しておきます。
  3. 嚥下内視鏡検査(Video Endoscopy: VE)
    鼻咽腔内視鏡を用いて嚥下機能を評価する方法です。VFと比較して被爆せずにベッドサイドで繰り返し行える利点があります。咽頭残留はよくみえますが、嚥下反射時の観察は不可能で誤嚥の瞬間をとらえることはできません。鼻咽腔ファイバーという内視鏡を咽頭に入れ、食物の嚥下の様子を観察する検査で、唾液や喀痰の貯留の有無、食物を飲み込んだ後の咽頭内への食物の残留の有無や気管への流入(誤嚥)などを評価することができます。また、嚥下に影響を与えることのある声帯の動きも評価することができます。

4.日常生活でのアドバイス

高齢者は全身機能の衰えに伴ない嚥下機能も低下します。その結果、むせやすくなったり、口のなかが乾燥して食物を飲みにくくなったりします。そのため、日頃生活での配慮が重要です。

<食事姿勢の配慮>

国立 歯医者 摂食・嚥下

食事の際は前かがみの姿勢をとるようにしましょう。要介護状態でベッド上で食事をする患者さんや食事に介助を必要とする場合、ベッドや椅子にもたれかかった上向きの状態で食事をすることが多くあります。上向きでは飲み込みにくく、また気道のふたが閉まる前に食物が滑り落ちて誤嚥する危険性があります。椅子でもベッド上でも、前屈みで食事することが大切です。なお、椅子に座って食事をする際は、正しい姿勢を保てるような配慮が必要です。

〈食事内容の配慮〉

スムーズに食事をするためには、嚥下に至るステージのどこに障害があるのかを見極め、それに合わせた食事内容の工夫が必要です。

1.咀嚼に問題がある場合
きざむ、軟らかく煮る、マッシュポテトのように押しつぶした状態にすること食べやすくなります。

2.食塊形成に問題がある場合
口のなかでまとめることが難しいため、細かくきざんだものはむせやすくなってしまいます。 一口大に切る、軟らかい状態にする、とろみをつける工夫をしましょう。

3.嚥下に問題がある場合
固形物でむせる場合と、水分でむせる場合があります。固形物でむせる場合には、軟らかくしたり、とろみをつけたりすると食べやすくなります。水分でむせる場合はお茶やスープなどにもとろみをつけるとむせにくくなります。

噛めない、飲み込みにくい場合、すぐに流動食や刻み食に切り替えてしまいがちですが、食物を口に入れてから飲み込むまでのどこに問題があるかをしっかり観察し鑑別する事によって、工夫の仕方も異なります。


摂食・嚥下リハビリテーションは機能が低下する前から予防的にトレーニング・リハビリテーションを行うことが重要です。オーラルフレイルに関しても合わせてご確認ください。