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歯牙のお話し① 〜犬歯〜
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は歯一に焦点をあててその歯の特徴についてお話をしていきます。今日の歯牙は犬歯です。
1.犬歯とは?
犬歯とは前歯と臼歯の間にある歯で、前から数えて3番目にある歯になります。犬でよく発達しているため犬歯と言われているそうです。また歯の先端が槍のように尖っていることから尖頭歯とも言われています。糸切り歯の方が馴染み深いかもしれませんが、糸を切るときに使うことから糸切り歯とも呼ばれています。犬歯といえば肉食の動物が食べ物にかぶりついて切り裂くと言うイメージがあるかと思います。また一般的な八重歯もこの歯が頬側に重なっていることを言います。歯根が最も太く、長く、最後まで残存しやすい歯牙になります。この犬歯が正常に機能することが噛み合わせの面でとても食うようになってきます。
2.テコの原理
口腔内はよくテコの原理で説明されます。みなさんは、てこの原理の1級、2級、3級の違いはご存知でしょうか?
<1級のテコ>
支点が中央にあり、左右に力点と作用点があるものです。離れれば離れるほど小さい力で重さのあるものを持ち上げられます。シーソーや釘抜きなどが1級のテコです。
<2級のテコ>
支点が一端にあり、その反対端に力点が、作用点が中央にあるものです。空き缶などの潰し器や紙の剪断器、栓抜きなどが2級のテコです。
<3級のテコ>
支点が一端にあり、その反対端が作用点、中央に力点があるものです。ピンセットや和バサミなどが3級のテコです。
和バサミと洋バサミの違い
1級と2級のテコは大きい力を作用点に発現することができます。しかし、支点に大きい力(負荷)がかかりやすいです。特に1級のテコは支点の負担が激しいといった欠点があります。それに対し、3級のテコは大きな力を作用点に発現することが出来ません。しかし、力点の作業距離を作用点に大きく反映できる点、支点に大きな負荷がかからない点などの利点があります。
では、口腔・顎関節は何級のテコだと思いますか?
正常な場合、
支点:顎関節
力点:筋肉(下顎角・筋突起)
作用点:歯牙(噛む場所)
の3級のテコになります。
3級のテコは大きな力を作用点に発現できない、支点に大きな負荷がかからないのが特徴です。正常な噛み合わせの場合、顎関節や咬合接触面には大きな力はかからないことになります。
早期接触がある場合だとどうなるのか?
早期接触とは噛み込んだときに全体が均一に当たるのではなく、どこか特定の場所が先にあたってしまい咬合力がその部分に集中してしまう噛み合わせです。さらに顎関節や他のストッパーになる歯牙にも大きな力がかかってしまいます。
横から見た場合、1級のテコ(シーソーの)ような力が加わります。顎関節、前歯部への負担が多くなります。
正面から見ら場合、2級のテコのような力が加わります。支点を軸に回転がさらに起こるため、早期接触の歯牙に負荷が多くかかってしまいます。
また、顔貌の骨格の違いによっても筋肉の走行が異なり、顎関節への影響に差があります。顎関節や臼歯部に負荷を加えないためには、臼歯離開が重要になります。臼歯離開を得るために重要になるのが犬歯だと考えています。
3.犬歯の役割とは?
咬合論や咬合様式についてはいくつもの考え方や派閥がありますが、僕は可能であれば、『犬歯誘導』により臼歯離開が得られる咬合が、物理的・解剖学的・生理学的に最も理想的で有効だと考えています。犬歯でガイドが接する事が重要ではなく臼歯離解することが大事だと思います。犬歯はガイドを付与するのに最も適した歯牙になります。自然と備わった、神様が与えてくれたとても重要な形態になります。
①歯根が一番太く長く丈夫な歯である。
犬歯の歯根が一番太く、長い、歯質も厚くなります。歯根の表面積も最大になります。そのため、側方力などの噛む力に十分耐えられる歯になります。細い釘だと強い力が加わった時に折れてしまい、また短い釘だと側方力に耐えられず揺れてきてしまいます。犬歯は長く太い歯根がしっかり支えているため側方力に十分耐えることができる構造になっています。
②顎関節から距離のあるところに存在する
犬歯は顎関節から直線的に遠いところに存在します。この位置にあるからこそ、側方力などの強い力がかかったとしても、実際に歯に加わる力はさほど強くなく歯牙が保存されます。
大臼歯部などの顎関節(支点)に近いところに側方力が加わると、机上の計算ですが、直線距離が半分ほどになるため加わる力は倍以上になることが予想されます。2級のテコは支点に近いほど大きな力がかかるという特徴があります。臼歯は三脚やテントのように上から押される力にはとても強いですが、犬歯ほど歯根は長くないため側方からの力には弱い特徴があります。この状態が続くと、歯の周りの靭帯:歯根膜が捻挫をしたような状態になり、「咬むと歯が痛い」、「浮いた感じ響く感じがする」といった症状が出てきます。これを咬合性外傷と呼びます。
このように、犬歯だけでなく我々の歯や歯列、顎関節や筋肉は自然と調和の取れた状態で生まれてきます。しかし、生活をするうえで悪習癖や歯牙の摩耗、誤った治療を受けることで咬合関係が気づかないうちに乱れていきます。長い年月をかけて少しずつ乱れてしまった関係性を元に戻すのは長期間通院が必要になることが多いです。噛み合わせ、全然治らない肩や首の凝り、めまいや偏頭痛など噛み合わせの異常が疑われる方は一度早めにご相談ください。