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欠損を放置すると…
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は「欠損:歯がなくなった状態を放置してしまうとどのような悪影響が出てしまうのかに」ついてお話しします!
前回まで矯正についてのお話しをしましたが、噛み合わせ不良は遺伝的な要因や悪癖による成長の過程によって起こるものです。しかし正常な噛み合わせでも、歯を失った後に治療をせずに長期間放っておくことで噛み合わせ不良が起こってしまいます。
【目次】
1.歯を失った後に治療をせずに長期間放っておくと…
2.噛み合わせ不良をおこさないために
3.歯の移動が起こってしまった場合
4.咀嚼効率:噛む力は?
5.咬合力について
1.歯を失った後に治療をせずに長期間放っておくと…
歯は周りの歯と支え合うことでしっかりと咬むことができます。一本でも歯がなくなり、スペースができるとそのスペースを補うように歯が移動します。噛み合う歯がなくなると、歯は挺出し、隣の歯は抜けたスペースに倒れるように移動し、スペースを補おうとします。この様な移動は少しずつ起こります。その為、気付かないうちに大きく傾き、抜いたスペースが狭くります。
このように、失った歯の両隣だけでなく、噛み合う歯にも影響を与えてしまうのです。そのため、歯を失った後に治療を行わずに長期間放置してしまうとお口全体の噛み合わせが少しずつ悪くなっていきます。また、変化は徐々に起こるため、ご自身でも気になりにくく、「気付いたときには噛み合わせ不良がだいぶ進んでしまっている」ということが起こってしまうのです。
2.噛み合わせ不良をおこさないために
歯を失った後の治療をきちんと行う事が重要です。補綴治療に関してはこちらもあわせてご確認ください。
①ブリッジ治療
抜いた歯(欠損歯)の前後にある歯を削り、それを土台(支台歯)とし、欠損部にダミーの歯を置いた被せ物を作ります。その被せ物を支台歯にセメント(接着剤)でしっかりとくっつける治療法です。抜いたところが一本分であれば、3本で一塊の被せ物を被せます。
②入れ歯治療
入れ歯は、床と呼ばれるピンク色の土台の上にダミーの歯を置く装置です。1本欠損から多数歯欠損まで幅広くに使用することができます。歯が残っている場合は手前の歯や、反対側にバネをかけ、歯と歯茎で装置を支えます。
③インプラント治療
歯のなくなったところの骨にチタン製のネジを埋め込みます。ネジの上に土台(アバットメント)をたてて、ダミーの歯を被せる治療です。
3.歯の移動が起こってしまった場合
①両隣の歯が傾いてくる
放置期間が長くなれば長くなるほど傾きも大きくなっていきます。ブリッジを製作するとき、傾きが大きい歯は、まっすぐに生えている歯より、大きく削る必要があります。そのため、神経をとる可能性が高くなります。
②隣の歯が倒れているためスペースが狭くなります。
スペースが狭いとインプラント手術や義歯を入れる事ができない事があります。
③上下的なスペース不足
初めの図にあるように、抜いた歯の反対側の歯(対合歯)もスペースを埋めようと、歯茎から出てくるように移動します。その為、時間が経過すると、噛んだ時に上下的なスペース(クリアランス)が減ります。どの治療でも、十分なクリアランスが確保できないと、治療ができない場合があります。
以上の問題を改善するために、移動した歯を部分矯正で元に戻す方法があります。歯の位置を元に戻すため、どの治療法も問題なく行う事ができます。ただし、矯正に6ヶ月ほど、場合によっては1年近く時間がかかります。矯正終了後欠損部に対する治療が行えるようになるため、治療期間は長くなります。
4.咀嚼効率:噛む力は?
咀嚼効率とは、どのくらい効率よく咀嚼できるかを指標化したものです。ピーナッツや精米を一定回数噛むことで、どれくらい細かく噛み砕けるかを調べます。ちなみに、親知らずを入れず奥から2番目の歯(第一大臼歯:前から6番目の歯)を失うと咀嚼効率が40%下がると言われています。つまり、第一大臼歯が咀嚼の大半を担っています。7を失っても咀嚼効率は大きく変わらないというデータもあります。6番目までの欠損に関しては補綴処置が積極的に行われます。
補綴治療を行うことで、咀嚼効率は改善されます。全て健康な自分の歯の時の咀嚼効率を100%とすると、
ブリッジ:60~70%
部分入れ歯:30~40%
総入れ歯:10~20%
インプラント:80~90%
と言われています。完全に元に戻すことは出来ませんが、数値に大きな差はありますがどの治療法でも改善は見られます。
5.咬合力について
咬合力(噛む力)って、どのくらいか考えた事はありますか?
食事中や緊張しているときなど、上下の歯を噛み合わせるタイミングは多くあります。そのときにかかる力はどのくらいかご存じでしょうか?
人が意図的に、思いきり歯を噛み合わせたときにはおよそ70kg、食べ物を噛むときには40〜60kgの力がかかっているとされています。また睡眠中に無意識に歯を噛み合わせているときには、250kgもの力がかかっているとされています。意図的に思いきり噛み合わせたときよりも、睡眠中の方が強い力がかかっています。睡眠中は無意識下であるため、「睡眠中の歯ぎしりや食いしばりをやめる」ということは不可能に近いです。
日常的に強い力がかかり続けることで、歯や歯周組織がダメージを受けすり減ったり、割れたり痛みが出ることがあります。これにより知覚過敏や痛みにつながります。また歯だけでなく歯ぐきや顎関節に影響が出ることもあります。
加えて歯ぎしり・食いしばりにより口腔周囲の筋肉が緊張状態となり、頭痛や肩こりにつながる可能性も示唆されています。歯ぎしり・食いしばりを根本的に止める方法は、ストレスなどそれらが起きている原因を突き止めて解消することです。あるいは常に口腔内に意識を向け、意図的に上下の歯を離す方法もあります。ただ先ほどの言ったように、睡眠中は無意識に歯ぎしり・食いしばりが起きていることもあり、根本的な解決が難しいです。そのため歯科医院では、歯ぎしり・食いしばりをしてしまっても歯に負担がかからないようマウスピースの装着を提案しています。患者さん一人ひとりに合ったマウスピースを作製し、睡眠中にはめてもらうことです。またマウスピースが体質的に合わない方にはボツリヌス製剤の提案をさせていただいてます。これにより歯にかかる負担・ダメージを和らげられるため、お悩みの方はお早めにご相談ください。
欠損を放置すると全身に影響が出てしまい治療も時間費用がかかり作業工程も煩雑になります。それぞれの治療のメリットデメリットや、治療期間、口腔内の状況や全身の健康状態を考慮した上で治療計画を立案していきます。不安なことや疑問があればいつでもお申し出ください。