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バイオフィルムついて

こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は歯周病のお話し:バイオフィルムについてお話しします。

バイオフィルムとは?

細菌の自然界での存在様式は、

(1)浮遊状態(プランクトニック)のもの
(2)表面に付着状態のもの
表面に付着し物体の表面に、菌と高分子化合物extracellular polymeric substance:EPSによって形成されている凝集塊:バイオフィルム

の2種類に分類できます。

バイオフィルムの特徴

国立 歯医者 バイオフィルム

バイオフィルムは複数の微生物とそれらの産物で構成されていて、相互に影響を及ぼしあい、栄養源を融通しあったり、薬剤に対して抵抗性を示すなど共同体を形成しています。抗菌剤や抗体はこのバイオフィルムの中へ浸透しにくいため、浮遊状態では効果のあった抗菌剤や免疫細胞が効きにくくなってしまいます。

薬剤の効果を発揮させるためには一度このバイオフィルムを機械的に破壊する必要があります。バイオフィルム内の病原性細菌が関与する感染症をバイオフィルム感染症といいます。う蝕も歯周病もバイオフィルム感染症の一つです。

自然界の細菌の多くはバイオフィルムを形成し存在しており、バイオフィルムは体内留置カテーテルのような医療器具にも形成され感染症を引き起こすとともに、難治性慢性感染症の一部にかかわることが明らかにされています。バイオフィルム状態での細菌の病原性についての解析が急速に増加しています。

口腔内において、唾液中の菌は浮遊状態(プランクトニック)であるのに対し、デンタルプラークはバイオフィルムであり、齲蝕、歯周炎はバイオフィルムによって起こる感染症です。バイオフィルムの基質を形成する EPSの組成は多糖、タンパク質、核酸、脂質であり、そのほとんどは微生物から分泌されたものです。EPSはその粘着性により菌体の物体表面への付着、バイオフィルムの強度や形態維持のような物理的な側面にかかわるとともに栄養源や水分の保持など多彩な役割を果たしています。EPSにより形成されるバイオフィルムの基質内にはチャネルが存在し、発育に必要な水や栄養分をバイオフィルム内部に供給しています。

バイオフィルムの形成は、厳しい条件の環境下での生存を可能とする発育様式であり、同じ細菌でもバイオフィルムを形成するとその性状が異なることが知られています。バイオフィルムはチャネルをもつものの、内部に高分子の物質は透過しません。そのため抗体や抗菌薬などはバイオフィルム内へ浸透することができません。バイオフィルム内では菌の密度が高いため、菌の増殖速度は低下しています。これらは、バイオフィルム形成とともに起こる抗菌薬に対する抵抗性の上昇にかかわると考えられています。さらにバイオフィルムでは、単独の菌に比べ大きな塊になるので食細胞が食食し処理することも困難になります。バイオフィルムの一部は、遊離し他の部位に付着しそこからまたバイオフィルムを形成する足場になります。Aggregaubacter actinomycetemcomitansのように、dispersin Bの分泌により周りの基質を分解して、バイオフィルムから積極的に離脱する菌種があることも報告されています。

クオラムセンシング

バイオフィルムには、クオラムセンシング (Quorum Sensing)という厄介な機能があります。

クオラムセンシングとは、細菌が自己誘導因子 (autoinducer) と呼ばれる分子を放出しあい、周囲の菌密度に応じた遺伝子発現や表現型を制御する仕組みのことを指します。つまり、バイオフィルムを放置すると、虫歯菌や歯周病菌が活動しやすい環境を与えてしまうことになります。クオラムセンシングにより、バイオフィルム中の細菌は、同じ細菌のみならず異なる細菌たちとも互いに情報伝達を行っています。

重度歯周病治療を行う場合、抗生物質を投与する老婆愛があります。使用するマクロライド系抗生物質は、このクオラムセンシングを阻害する可能性が示唆されており、バイオフィルムの形成を抑制および破壊すると考えられています。

バイオフィルムを除去するには

台所 や 風呂場の清掃を少ししないでいると、” ヌルヌル ” としてきます。その ” ヌルヌル ” を除去しようと思っても、塩素系の薬剤等を使用しない限り、ブラシのみではなかなか取除くことは困難であると思います。この ” ヌルヌル ” こそがバイオフィルムです。口腔内も同じです。かなりの高濃度の薬剤を使用しない限り、内部の細菌を殺菌することは困難です。細菌をそのままにしておくと、歯周病、虫歯を引き起す原因となってしまいます。

では、どのように除去していくのか?バイオフィルムの除去にはマウスウォッシュを使用するだけでは、取り除くことは不可能です。汚れを歯ブラシを用いて機械的に除去することが必要です。食器を洗う時も洗剤につけているだけではしっかり取りきれません。スポンジでしっかり擦って機械的に取らないと除去できません。それでも数ヶ月に一度ハイターなどの塩素系の洗剤を用いると思います。

口腔内も同じです。一番重要なのは歯ブラシによる機械的清掃です。自分では頑張って磨いていても知らないうちに汚れが蓄積してしまいます。どこの部分に磨き残しがあるのかをしっかり把握することが大切です。また、歯ブラシの当て方も的確に当てられるよう指導していきます。どんなに頑張って磨いていても、全ての汚れを完全に取り除くのはかなりの努力が必要です。そのため、歯科医院での定期的な歯科クリーニングをおすすめします。

歯科医院では、さまざまな器具を使用し、口腔内に存在するバイオフィルムを徹底的に除去します。

歯科医師や歯科衛生士のような特別な教育・訓練を受けた専門家が、
 器具やペースト(フッ素入り歯面清掃剤)などの専門の道具を用いて、
  歯面、歯周ポケット内部を
   機械的に除去することを言います。

これを、『 Professional Mechanical Tooth  Cleaning』=PMTCと言います。バイオフィルムを除去することが虫歯・歯周病の予防に効果的です。明日はPMTCについて詳しくお話ししていきます。