ブログ
ラバーダムの術式について
こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今までも何度かお話ししてきましたが、今日は「ラバーダム防湿」の手順についてお復習していきましょう。過去の記事も併せてご確認ください。
【目次】
1.ラバーダム防湿の目的
2.ラバーダム防湿で用いる器具
3.ラバーダム防湿の術式
1.ラバーダム防湿の目的
① 治療歯や手指、および治療用器具の唾液による汚染からの防護
②ファイルなどの治療用器具や感染歯質の削片などの誤飲、 誤嚥の予防
③口唇や舌などの軟組織の排除による明瞭で安全な術野の確保
④清掃剤や薬剤の組織への漏洩の防止
虫歯は原因菌が特定されており細菌感染症の一つです。感染症を扱うがゆえに、今以上に感染源を管内に入れないよう予防することは必須であり、治療を行う歯科医師として当然の義務だと考えています。当院では根管治療に限らず、使用した方がメリットが大きいと判断した処置に関しては基本的にラバーダムを用いて治療を行っています。また嘔吐反射のある方で喉の奥にお水がたまるのが苦手な方でもラバーダム防湿下だとお水が溜まりにくく治療が楽だったという方もいらっしゃいます。今まで苦しくて大変だった方も、一度ご相談ください。
2.ラバーダム防湿で用いる器具
<ラバーダムシート>
デンタルダムとも呼ばれ、天然ゴムラテックス製のものが主です。ラテックスアレルギーを有する患者さんの場合、ノンラテックス製を使います。 製品によってサイズ、厚さ、香りなどが異なります。
<クランプフォーセップス>
クランプ鉗子とも呼ばれ、クランプを歯に装着するた
めに用います。クランプに空いている小さな穴に先端をかけ、クランプを開きながら歯に装着します。
<ラバーダムパンチ>
ラバーダムシートから歯を露出するための適切な大きさの孔を付与するために用います。前歯の小さい穴から、臼歯部の大きな穴までサイズがあります。
<ラバーダムフレーム>
ヤングのフレームとも呼ばれます。ラバーダムシートを保持するために用いられるもので、ステンレス製あるいはプラスチック製のものがあります。大きさや形状もいくつかあります。
<クランプ>
歯牙の種類により形状が異なります。当院では基本的にこの3種類で工夫してラバーダム防湿を行っています。
3.ラバーダム防湿の術式
ラバーダム防湿の術式には、(1)ウィングドテクニック、 (2)ウィングレステクニ ック、(3)ラバーファースト法の3 つの代表的な方法が存在します。
(1)ウイングドテクニック
有翼型クランプを使用した方法であるためこのように呼ばれます。この方法では、 クランプのウイング部によって比較的広い術野が得られるが、ラバーシートによってクランプ装着時の視認性が妨げられるため、試適時に確認した位置に正しくクランプを装着することが難しく、歯肉を傷つけてしまうリスクがります。
- クランプの試適を行い, 歯に適合するクランプを選択する。
- ラバーシートにパンチで穴をあける。
- 穴にクランプの翼部をかけ、フォーセップスで口腔内に運び患歯にクランプを装着する。
- シートを広げてフレームを設置する。
- クランプの翼部にかかったラバーシートを練成充填器などを用いてて外す。
- フロスを用いて歯間部にラバーシートを滑り込ませる。
- 一度クランプを緩めた後、 シートをクランプの下まで滑り込ませ歯頸部にしっかりと密着させる。
- 咬合面からみた際に歯の周りに隙間がないことを確認する
(2)ウイングレステクニック
無翼型クランプを使用した方法。 この方法では先にクランプのみを装着するため、クランプ
装着時に歯肉を傷つけるおそれが少なく、比較的操作が簡単である。 しかし クランプの適合が悪いと ラバーシートを装着する際にクランプがずれて歯肉を傷つけることがあるため、 クランプの選択に注意が必要です。
- 患歯に適合するクランプを選択し、装着する。
- 穴をあけたラバーシートを両手で把持して口腔内に運び 、 クランプに引っ掛ける。
- クランプが装着された患歯全体を露出させる。
- シートを広げ、ラバーダムフレームを設置する
- フロスを用いて歯間部にラバーシートを滑り込ませる。
- 一度クランプを緩めた後、 シートをクランプの下まで滑り込ませ歯頸部にしっかりと密着させる。
- 咬合面からみた際に歯の周りに隙間がないことを確認する
(3)ラバーファーストテクニック
ラバーシートを先に歯に装着し、指で押し下げた状態で穴から露出している患歯にクランプを装着する方法。 前歯部で複数歯にラバーダム防湿を行う場合にこの方法を用いることが多く、場合によってはクランプを使用せずにフロスやウェッジによってラバーシートの固定を行うこともあります。
- テンプレートを参考にするか、シートをフレームにつけた状態で歯に押し当てて穴の場所を印記し、 シートにパンチであける。
- ラバーシートを口腔内に運び、該当する歯を全て通していく。
- 最遠心の歯にクランプをかけておくほうがスムーズに進めることができる。
- クランプやウェッジで固定をする。
- シートを広げ、ラバーダムフレームを設置する
- フロスを用いて歯間部にラバーシートを滑り込ませる。
- 一度クランプを緩めた後、 シートをクランプの下まで滑り込ませ歯頸部にしっかりと密着させる。
- 咬合面からみた際に歯の周りに隙間がないことを確認する
<臨床での実際の術式>
僕は臨床ではほとんどのケースでウイングレスのクランプを用いています。もちろん大臼歯部などではプラスチッククランプも使いますが、基本的にはウイングレステクニックでラバーダム防湿を行っています。
ラバーダムが装着困難ほど、歯質が崩壊している方もいます。その場合、前準備として歯肉切除や隔壁を立ててからラバーダム下での治療がスタートとなります。放置や中断してしまうと歯質が脆くなってしまうため間を開けず進めていきましょう。