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関連痛について①

こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は「関連痛」についてお話しします。

 関連痛?とよくご存知ない方も多いかと思いますが…上の歯が痛くて歯医者さんに行ったのに、検査したら下の歯が原因だったと診断された方はいらっしゃるかと思います。かなり強い痛みの場合、痛みが錯覚した伝わってしまうこともあります。今日はそんな「関連痛」についてお話ししていきます。



1.歯の痛みの神経

歯の痛みを脳に伝達する神経は、三叉神経(さんさ神経)と呼ばれる脳神経です。12本の脳神経の5番目の神経で、3本に大きく枝分かれして顔面の感覚を支配しています。歯の痛みを伝達する際に痛みの場所を錯覚することが時々ありますが、これを関連痛と呼びます。三叉神経の末端から伝達される痛みの情報が脳に近づくにつれて1本の神経になるため、どこの末端から情報が伝達されているのか分からなくなることがあります。

国立 歯医者 関連痛

<三叉神経>

顔面領域の感覚を脳に伝える末梢神経のひとつです。皮膚にくまなく分布しており触覚、痛覚、温度覚などの感覚受容器(センサー)です。

・第1枝:眼神経
・第2枝:上顎神経
・第3枝:下顎神経

関連痛は奥歯で起こりやすく、隣在歯や上下の歯を間違えたりすることがよくあります。三叉神経は左右1対になっており顔面部の感覚は左右別々に支配されているため、左右で痛みを錯覚することはほとんどありません。また歯痛錯誤は、歯周疾患や根尖病変よりも知覚過敏や大きな虫歯(歯髄炎)による痛みで起きやすいと言われています。

<関連痛とは?>
関連痛とは、「痛みの原因が生じた部位と異なる神経支配領域に感じられる痛み」と定義されています。痛みの発生源(疼痛発生源)としては、顎を動かす筋肉(咬筋、側頭筋など)、内臓(心臓など)、鼻腔(上顎洞など)、関節等があります。そして痛い部位(疼痛感受部位)が歯や歯ぐき等に生じる時に、歯や歯ぐきに異常がないのに痛む状況になります。そのメカニズムには諸説があり、いまだに十分に解明されている訳ではありませんが、脊髄のニューロンが関連しているといわれています。

2.非歯原性歯痛

非歯原性歯痛とは、「歯には原因がない歯痛」のことです。
予防が普及してきましたが、歯科医院を受診するきっかけの最も多いものはやはり「痛み」だと思われます。口腔内や口腔周囲に起こる「痛み」で、とく激しい痛みは「少しでも早く取り除いてもらいたい」思います。また軽い痛みであっても悪化したりしないかと不安になってしまいます。これらの痛みの多くは、歯が原因となる歯痛で「歯原性歯痛」と呼ばれています。歯原性歯痛は、歯髄(歯の中の神経)や歯の周りの歯周組織が原因となる痛みです。しかし、歯が原因ではないが、歯に痛みが出てしまうことがあります。これを非歯原性歯痛と言います。
口腔顔面痛学会では、非歯原性歯痛を以下のように分類しています。

<非歯原性歯痛の分類>
①筋・筋膜性歯痛
②神経障害性歯痛
③神経血管性歯痛
④上顎洞性歯痛
⑤心臓性歯痛
⑥精神疾患または心理社会的要因による歯痛
⑦特発性歯痛(非定型歯痛を含む)
⑧その他さまざまな疾患により生じる歯痛

2-1.筋・筋膜性歯痛

筋・筋膜性歯痛は顎を動かす筋肉に痛みを生じる場所があり、それを歯の痛みとして感じることで生じる歯痛:筋肉痛からくる歯痛です。

<筋・筋膜性歯痛の特徴>
痛みを生じやすいのは上下の奥歯です。どちらかというと漠然とした鈍い痛みが多く、1日中痛む方もいれば、痛みが出たり治ったりと波がある方もいます。最も大きな特徴は筋肉中にトリガーポイントと呼ばれるしこりのようなものがあり、ここを指等で押すとうめくような痛みが生じ、このトリガーポイントを5秒程度押し続けると歯痛が生じてきます。トリガーポイントを刺激した時に歯痛が再現されれば、筋・筋膜性歯痛と考えられます。

国立 歯医者 関連痛
国立 歯医者 関連痛

筋・筋膜性歯痛の原因としては、顎を動かす咀嚼筋が慢性的に疲労すると筋肉の中に“しこり”ができ痛みのトリガーポイントとなると言われています。場合によっては首や肩の筋肉に関連して歯痛が生じることもあります。咬合診断・筋検査も行っていますので、気になる方はご相談ください。

トリガーポイントは顎を動かす筋肉を酷使した結果おこる症状ですので、筋肉のストレッチやマッサージにより筋の血流を良くし、“こり”を解消していくことになります。急性であれば消炎鎮痛剤を服用することもあります。

2-2.神経障害性歯痛

神経障害性歯痛とは、末梢から中枢に至る神経の何処かに障害が生じて感じる歯の痛みです。 神経痛と呼ばれるもので、瞬間的に刺されたような激痛が起こる「発作性神経痛」と、じりじりと焼けつくような痛みが24時間続く「持続性神経痛」に分けられます。

(1)発作性神経痛
主に三叉神経や舌咽神経の神経痛です。上顎の犬歯や下顎の臼歯付近に痛みを感じることが多く、電撃様疼痛(瞬間的に電気が走り抜けるような痛み)と表現される激痛です。痛む時間は瞬間的で長くありません。痛みが出る前に「歯がしみる」などの普通の歯痛が感じられることもあり、鑑別が難しいです。通常50歳以上で発症し、鼻の脇等、痛みを誘発する特定のトリガーゾーンがあることが多く、洗顔、髭そり、歯磨きなどに支障をきたすことがあります。発作と発作の間にはまったく痛みがなく、また寛解期といわれる全く痛み発作が生じない時期があります。治療としてはカルバマゼピンというお薬が一般的です。

(2)持続性神経痛
帯状疱疹性歯痛とも呼ばれ、神経節と呼ばれる部位に潜伏していた帯状疱疹ウィルスの感染症です。難治性疼痛のひとつと言われています。帯状疱疹関連痛には急性期の帯状疱疹と慢性期の帯状疱疹後神経痛があり病態が異なります。

急性期は三叉神経の走行に一致した部位に水泡形成や知覚鈍麻が生じます。この時ウィルスの進行に伴い、激しい歯痛が生じます。痛みは1日中持続し、痛みで夜も眠れない状況になります。粘膜部にできた水泡や皮膚にできた皮疹は徐々に治癒していきますが、慢性期になると神経痛のような痛みが残ることがあり、これを帯状疱疹後神経痛と言います。この神経痛に対してはプレガバリンというお薬が一般的です。


今日は比較的遭遇することの多い関連痛についてお話ししましした。明日も続きをお話しします。