国立駅南口徒歩30秒のサンドラッグ3階の歯医者

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外傷について②

こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。今日は昨日に引き続き外傷:破折についてお話しします。


 歯の外傷は受傷歯のみならず、受傷者の口腔機能や審美性、心理面へも大きな影響を与えます。歯の外傷は1~2歳の乳幼児と7~8歳の学童に多発する傾向にあります。前者は運動協調性の発達前期にあたり、原因は転倒が最も多く、次いで衝突転落打撲と続き、多くが日常生活の中で発生します。 永久歯の外傷の原因もほぼ同じですが、その背景には交通事故や暴行、スポーツなどがあり、日常的な生活の中で発生するものはそれほど多くないです。特にスポーツでは転倒や衝突,接触などの機会が常に あり、歯の外傷のリスクになっています。スポーツ関係者は、歯への衝撃力を分散し、重篤な障害のリスクを軽減するマウスガードなどのプロテクターの使用を運動選手に提案する事が望ましいです。

 歯の外傷では迅速かつ適切な対応によって、好ましい治療結果が得られることが多いです。一般の人々にも応急処置や専門家による緊急処置の必要性を認識してもらうことが何よりも望ましいです。一方、歯科医師はいかなるときも適切な対応が行えるよう準備しておかなければならないです。受傷した患者さんが来院されたら、直ちに診察・検査・診断し、外傷の内容と自身の訓練や知識、経験に基づいて治療や専門機関への紹介などの適切な対応を行う責任があります。なお、原因となった事故により頭部、顎顔面等への外傷や全身状態への影響が疑われる場合は医師による緊急処置を優先するため救急病病院などへの紹介も必要です。近隣の受け入れ先を事前に調べておきましょう。

受傷した患者さんの診察では、受傷部位の範囲と受傷の程度を的確に判断して正確な診断を行うために、 迅速かつ十分な医療面接を行い、次いで受傷歯について視診、エックス線検査、さらには触診、打診、 動揺度の検査を行います。治療計画は、外傷の程度だけではなく、患者の健康状態や発育状態を考慮して立案します。なお、損傷が歯髄に及ぶ歯の外傷の場合、適切な初期対応によって歯髄と歯を保存できる場合が多いです。特に小児の場合には生体の治癒力が高いことを考慮し、できるだけ歯髄と歯を保存するよう心掛けましょう。また、歯の外傷では後に合併症が生じる場合が少なくないので、外傷の種類と程度に応じた経過観察を実施します。


【分類】

1.歯冠破折

1)不完全破折(亀裂)
定義:実質欠損を伴わないエナメル質の不完全な破折(亀裂)
診断:歯の形態とエックス線写真には異常は認められないが、エナメル質表面に破折線を認める。
治療目的:歯髄の生活力を維持する
治療:冷水痛がある場合にはエナメル質表面をレジンコーティングする 
経過観察:1~3か月後に予後を確認する。その後、少なくとも1年間は経過を観察する
予後:合併症は起こらない事が多い


2)露髄を伴わない歯冠破折 
定義
(1) エナメル質破折:エナメル質に限局した歯の実質欠損
(2) エナメル質・象牙質破折:歯髄には達しないが、象牙質に及ぶ実質欠損
診 断:臨床的には形態が変化し、歯冠構造の喪失が認められる
治療目的:歯髄の生活力を維持し、正常な外観と機能を回復する
治 療:
・破折片を接着するか、あるいは接着性レジン修復によって歯冠形態を回復する
・象牙質破折が重度のものでは水酸化カルシウム製剤で間接覆髄を行ってから歯冠形態の回復を行う
経過観察:1~3か月後に予後を確認する。その後少なくとも1年間は経過を観察する
予 後:露髄や脱臼を伴わない場合、合併症は起こらないことが多い。受傷後の迅速な診察と処置が良好な治療結果をもたらす


3)露髄を伴う歯冠破折
定義:露髄を伴うエナメル質・象牙質の実質欠損
診断:臨床的には形態が変化し、歯冠構造の喪失が認められる
治療目的:歯髄の生活力を維持し、正常な外観と機能を回復する
治 療
(1) 根未完成歯の場合
局所麻酔下に、露髄の程度と露出した歯髄の状況に応じて直接覆髄法か部分生活断髄法、 あるいは生活断髄法を行う。そして、覆髄部を含めた破折面を封鎖性が確実なセメントか 接着性レジンで仮封する。1~2か月後、仮封材を除去し、歯冠形態を回復する。

(2) 根完成歯の場合
(イ)露髄面が新鮮な場合:(1) と同じ方法で治療する
(ロ)露髄面が陳旧性である場合:抜髄または根管治療を実施する 

経過観察:1~3か月後に予後を確認する。その後少なくとも3年間は経過を観察する
予後:受傷後の迅速な診察と処置が良好な治療結果をもたらす

2.歯根破折

1)歯根破折
定義:セメント質と象牙質、歯髄を含む歯根の破折

診断:臨床的には受傷歯が挺出したように見えることがある。この場合エックス線写真では、根尖側破折片から歯冠側破折片が部分的に離れたように見えるほか、ピンセットで歯の動揺度を検査すると、動揺の支点が短いことが特徴となる。歯冠側破折片と根尖側破折片が分離して いない場合には、これらの特徴を示さないことが多い。乳歯の場合、エックス線写真では破 折線が後続永久歯の為に不明瞭となりやすい

治療目的:歯根膜線維と歯髄血管の断裂を治癒させ、歯の審美性と機能をもとの状態に保つために、出 来るだけ早く歯冠側破折片を解剖学的に正しい位置に戻し、固定を堅固にして安静を保つ

治 療:歯冠部破折片に転位が見られる場合には速やかに整復する。転位が見られない場合を含め、 受傷歯は隣在歯を固定源として2~3か月間堅固に固定する。根管歯髄の壊死の徴候が現れるまで根管治療はしない。根管治療の適応となった場合でも、歯冠側破折片の根管治療にとどめ、根尖側破折片の歯髄の除去はしない

経過観察:1,2,3、6,12 か月後に予後を確認する

予 後:受傷時の歯根形成段階と歯冠側破折片の転位の程度が予後を左右する要素になると考えられ る。合併症の頻度は受傷の程度に相関するが、歯髄処置の必要性が生じたかを確認するため に全ての症例で頻繁な経過観察が必要である

2)歯冠・歯根破折

定 義:破折線が歯冠から解剖的歯頸線を含み、歯根に達している破折。エナメル質、象牙質、セメ ント質を含む破折であり、歯髄まで達している場合と達していない場合がある

診 断:臨床的には破折は歯冠で確認できる。破折片が動揺している場合は通常痛みが強い 治療目的:歯髄の生活力を維持し、正常な外観と機能を回復する

治 療:歯肉縁下に及ぶ破折の程度と型により治療法を決定する。歯冠部歯髄まで達している場合は 歯冠破折の3)の治療法に準じて対応する。歯肉縁下深部におよぶ場合は歯の保存が難しく なる

経過観察:1、2、3、6、12 か月後か、あるいは治療の状況により決定する
予 後:歯肉縁下に及ぶ破折の程度と型により予後が左右される。


幼い頃や成長過程での外傷•破折後の歯牙に関しては長期的に経過を見ていくことが多いです。何か変化があったときにはすぐにご連絡ください。明日は脱臼、骨折についてお話しします。