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歯周病と癌の関係

こんにちは。JR国立駅南口30秒の歯医者、国立みんなの歯医者・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科院長の三井です。歯周病が与える全身への影響については以前にもお話ししましたが今日は「歯周病と癌」についてお話しします。


【目次】
1.癌とは?
2.癌と免疫細胞


1.癌とは?

細胞には、細胞の増殖や細胞の死をコントロールする能力が備わっています。アポトーシスといい、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺つまりプログラムされた細胞死のことです。例えばオタマジャクシからカエルに成長する時に尻尾がなくなるのも、人の指が形成される過程で指の間の細胞がなくなるのも、全てアポトーシスによるものです。アポトーシスの過程は一連の遺伝子により制御されていて、エネルギーを消費し能動的に遂行されます。ネクローシスと異なって、原則的に炎症を引き起こさないという性質があり、生体内の細胞環境のホメオスタシスを維持する重要なメカニズムとなっています。免疫系の発達、調節にも関係していて、例えば自己抗原に反応する細胞の除去等に重要な役割を果たしています。

しかし、正常な細胞が細胞分裂を行う際に、遺伝子に傷(変異)がつくことがあります。変異した細胞は細胞の増殖をコントロールが出来なくなってしまい、変異した細胞が増殖してできた塊を「腫瘍」と呼びます。

腫瘍には細胞の増え方や広がり方の違いから、良性腫瘍と悪性腫瘍に分けます。悪性腫瘍とは、細胞が無秩序に増えながら周囲の組織にしみ込むように広がったり(浸潤)、血管などを介してからだのあちこち(転移)に広がります。良性腫瘍のことポリープなどと呼び、悪性腫瘍のことを一般的に癌と呼びます。死亡原因の一位の癌は、体に様々な悪い影響をもたらします。癌の一番恐ろしいところは完治したと思っても、また腫瘍が現れる(再発)ことです。

2.癌と免疫細胞

免疫の役割の一つは、外部から侵入してきた病原体などを「非自己」と認識して排除する防衛機能です。人体は約60兆個の細胞から作られており、その2%(1兆個以上)の細胞が毎日入れ替わっています。その中には癌になる可能性のあるミュータント細胞が数千個含まれています。このミュータント細胞は体の中にいらない細胞です。免疫細胞は体内に侵入した細菌を排除するだけでなく、自分の体の中で生まれた癌になるかもしれない細胞も攻撃し、体の健康を守ってくれています。高齢になるとがんの発症が増加するのはミュータント細胞を攻撃する免疫機能が年齢により低下するためです。また、若い人は免疫機能はしっかり機能していますが、若さゆえに細胞分裂が活発に行われるため、癌の進行が速いと言われています。

免疫細胞については単独で後日詳しくお話しします。

消化器系癌
九州歯科大学で行われた研究によると、5本以上自分の歯を歯周病などで失った場合、そうでない人と比べて消化器系のがんで死亡する確率が約2~3倍も高くなったことが明らかになりました。

食道癌
熊本大学大学院生命科学研究部の研究によると、歯周病と食道がんと関係があることがわかりました。歯周病菌の中に、フゾバクテリアというものがあり、食道がんの手術を受けた患者の20%から、このフゾバクテリアが検出されました。さらに、フゾバクテリアが検出された人とされなかった人の術後の生存期間を比べたところ、検出されなかったグループの3年生存率は79%、そして5年生存率は75%だったのに対して、検出されたグループは3年生存率が64%、5年生存率は59%で、大きな差が生じました。

国立 歯医者 癌

ソバクテリウムが、歯周病によって出血した場所から血管内に入こみます。体内に入り込むと免疫細胞を撹乱し、免疫細胞の働きを弱めます。働きの弱まった免疫細胞は癌化の可能性のあるミュータント細胞を抑えきれなくなり、食道がんや大腸がんを発症します。また、癌になった細胞にフソバクテリウムが感染すると癌細胞を増殖させることが分かりました。癌の進行が早くなったり、転移も多いという事が近年の研究で明らかになりました。

癌細胞の中とお口の中のフソバクテリウムを調べるとDNAパターンが同じ、つまり、癌細胞の中の菌とお口の中の菌が同じ個体から増えた菌ということが明らかになりました。

その他の癌
2008年、イギリスのImperial College Londonで行われた研究によると、歯周病のある人は、膵臓がんになる確率が54%高まったことが明らかになりました。膵臓がん以外にも、腎がん49%、肺がん36%、血液がん30%とそれぞれ発症リスクが高くなることがわかりました。


癌に限らず、入院や手術、薬剤療法の可能性のある治療を進める前に口腔ケアを行いましょう!癌の治療には手術の他にも、抗癌剤治療などがあります。これらの治療法の副作用には、口内炎などの症状が口腔内に現れます。

ほかにも治療の副作用で吐き気を催すため、口腔内のケアが行き届かず歯周病菌が増えます。
免疫力の下がっていると歯周病菌が、合併症を引き起こす可能性が高くなります。歯周病菌は癌治療そのものにも影響を与えます。そのため、アメリカでは以前から抗癌剤治療を始める前に、歯科医院での口腔ケアを受け、術後の合併症を予防することが一般的となっています。
近年日本でも、まず口腔ケアを受けるように推奨されています。